PMI Consulting Co.,ltd.
scroll down ▼

2009.03.25

新人研修をより効果的なものにするためのポイント

 3月も半ばを過ぎ、都内の学校では卒業式が行われ始め、通勤途中にこれから卒業式へ向かう様子の袴姿の女性を見掛ける機会も増えてきた。殺伐としたいつもの通勤風景の中、そうした和装の方を見ると心が和むのはやはり日本人だからだろう。朝から何となく得した気分がするものだ。ところで、こうした卒業式シーズンの真っ只中にある一方で、早くも入社式を済ませてしまった企業もある。そして、入社式の直後から徐々に新人研修を開催し始めている企業も多い。企業としては、新入社員にはなるべく早く学生気分から抜け出してもらい、社会人としての自覚を持って入社して欲しいという気持ちと、少しでも即戦力に近付いて欲しいという気持ちの表れだろう。

 さて、新入社員を待っている新人研修だが、そのカリキュラムは、ビジネスマナーからロジカルシンキングなどのベーシックスキル、その企業特有の専門スキルの習得に至るまで広範囲なプログラムが用意されていることが多い。中には、集合研修だけでなく、OJTと組み合わせて行われるプログラムもある。研修を企画している人事部は、新入社員が現場に出た際に最低限必要なスキルを習得できるよう、入念に研修カリキュラムを検討し、実施しているのである。そして、昨年来の急速な景気悪化の影響を受け、多くの企業であらゆる予算が削減されている現在の状況にあっても、人事部は予算を確保し、研修の企画見直しなど知恵を絞り工夫を凝らしながら、何とか新人研修を実施しようと取り組んでいる。社会人生活を通して、社員がこれほど「教育を受ける」事に集中して時間を使うことが許されているのは、新入社員の時期が最初で最後のことだと言っていいだろう。

 ところが、これまで様々な企業の人事担当者の方とお会いし、新人研修に関する話を伺うと、「研修で学習したはずの内容が現場で実践できない」という話を良く耳にするのである。実は、この現象は新人研修に限って発生していることではないのだが、新人研修ではより顕著になる傾向があるようなのだ。いくら研修の場で出来るようなっても、現場で発揮されてなくは、学習した意味が全くなくなってしまう。そこで、新人研修をより実りのあるものとする為に、どのような点に注意すべきかについて考えたい。

 まず、研修の場ではできることが、現場に戻った途端にできなくなってしまう原因の一つには、今時の新入社員に多い課題に起因するものが考えられる。例えば、指示待ちの姿勢で自発的に動くことができない、精神的に打たれ弱く怒られるのを避けるためチャレンジしない、などである。確かに、これらのことが克服されないままでは、いくら研修で教育を施してスキルを習得させても、現場で発揮されるのを期待することは難しい。
 しかし、新入社員一人ひとりが、これらの課題を克服するのを待っているだけは一向に改善は期待できず、やはり企業側からも気付きを与えてやるべきだろう。その気付きとは、単にスキルを習得する事がゴールではなく、そもそも自分自身が組織の中において、学習したスキルを使ってどのような価値を生み出すべきなのかを気付かせる、ということである。それがなければ、新入社員が自発的な行動やチャレンジングな行動を起こすことは難しい。故に、新人研修を実りあるものにするためには、単にスキルを習得するだけでなく、自らが所属する組織にデビューする前に、その企業や組織について良く理解しておくことも、実は重要なのである。

 ところが、多くの企業の新人研修のカリキュラムを見ていくと、ビジネスマナーやロジカルシンキング、プレゼンテーションなどの汎用スキルと、企業毎に必要な専門スキルなどを教えるプログラムが充実していることに比べると、自社のビジネスの仕組みや組織のミッションなどについて、業務経験のない社員が理解できるまで教えるような機会は、必ずしも充実はしてない。企業にしてみれば、我が社に入社したからにはうちのビジネスモデルくらいは理解していて当然、ということなのかもしれないが、仮にきちんと予習していたとしても、所詮は本人の経験が全く伴っていない知識である。それだけでは現場で通用しないことくらい想像に難くない。やはり、基本的には先輩や上司が、自社のビジネスモデルの仕組みや組織の在り方、自身に期待される役割などについて、自らの成功経験や失敗した経験を織り交ぜながら新入社員に説明することで、実際の業務の臨場感を感じさせながら学習する機会を与えるべきである。
 新人研修では、現場に出た後一通りの「作業」が出来るようになるために必要なスキルを習得させることに注力しがちである。しかし、入社したての時期だからこそ、自社の事業や組織について良く学び、その中で自分自身がどうあるべきなのか、どのような価値を生み出していくべきなのか、をしっかりと気付かせるべきである。そして、スキルと気付きを与えた後は、現場で積極的に実践させていく事が大事である。なぜなら、研修で学習したスキルは、現場で実践しなければ本人のスキルとして定着しないのはもちろん、更なるスキルの向上も期待できないからだ。ところが、新人研修に限らず、研修で最も良くない事の一つに、現場側が研修の目的や中身をよく理解していないがために、結果的に受講者に実践する機会を与えていないことがある。結果的にというのは、現場の上司や先輩が良かれと思って現場で慣例となっている仕事のやり方を踏襲させるために、研修で学習したスキルを実践しなくなってしまうことなどを指している。
 従って、スキルと気付きを与える研修主催者とスキルを実践する場を与える現場が連携し、「学習から実践まで」を一つの育成の仕組みをとして流れを構築する事が、研修の効果を高める為には必要である。そのような仕組みが用意されることで、新入社員は、研修で学習したことがどのような目的のために、どのような場面で活用すべきかを理解した上で、自発的でチャレンジングな行動が取れるようになってくるはずだ。そして、この仕組みは新人研修だけでなく、他の多くの研修にも必要なものと言えるだろう。

 これまでは、研修と言えば受講者や主催者だけが当事であることが多かったかもしれないが、研修をより効果的なものにしていく為には、受講者の上長や所属する組織も積極的に当事者として関わることが重要となる。そして、研修主催者・現場・受講者のそれぞれが研修の目的を理解し、その目的に対してそれぞれが何をすべきかを継続的に考えることが、研修の効果を最大化していくための一つのカギにもなるだろう。
 今回のように、研修の企画をされている人事部の方などの考えに触れると、受講する社員以上に、研修について真剣に考えていることに、改めて気がつかされる。私自身、企業の中にあって研修を受けるチャンスがある事のありがたみを良く理解し、研修の効果を最大化していくために、自分自身がやるべき事を改めて考えなくてはならないと、そう感じている。


 

ヘッジホッグ

Recruit

採用情報

お客様と共に成長し続ける新しい仲間を求めています

Contact

お問い合わせ