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2023.02.06

「多様性(ダイバーシティ)」を紐解く

 世の中では多くのビジネスキーワードで溢れかえっている。サステナブル、心理的安全性などあるが、その中でも多様性(ダイバーシティ)といった言葉が日常生活含めて、ビジネスの世界でも日に日に存在感を強めている。

 

 多様性(ダイバーシティ)という言葉は、「ある集団の中に異なる特徴・特性を持つ人がともに存在すること」を意味し、日常生活では、人種や国籍、性別、年齢、障がいの有無、宗教、性的指向、価値観などを指す。ビジネスの世界では、日常生活における観点に加え、キャリアや経験、職歴、働き方といったことまで幅広いジャンルにまでわたっている。

 

 世の中における多様性(ダイバーシティ)という言葉の存在の大きさは、日常会話にも頻繁に現れて、人と人とを比較し、「違い」や「異質」を拒絶する発言を禁句としている。“個人の持つ多様性を認める・認められるべき”という論であり、“いかなる人権も侵害されてはならない”という考えを背景にしている。しかし、個人の持つ多様性を認めることの有用性についての解釈は、私を含め人々の間に浸透しているとはいえない。そこで、あらゆるシーンでお題目のように叫ばれている多様性(ダイバーシティ)の本質を紐解いていきたい。

 

 多様性(ダイバーシティ)の本質を紐解くには、ビジネスシーンに焦点を当てると理解しやすい。ビジネスの世界は営利が基本であるように、目的が明確であるため、多様性(ダイバーシティ)という言葉の使用方法も定義しやすい。

 ビジネスの世界では、多様性(ダイバーシティ)の後ろに“マネジメント”という言葉をくっ付け、“ダイバーシティマネジメント”という言葉で使用されている。これらは「従業員に多様性を持たせることで利益が得られるという主張」であり、1960年代以降から徐々に広がってきている。

 だが、ダイバーシティマネジメントを推進すればするほど経済効果があるということに、相関性はあっても因果関係はみられないことを多くの研究結果が示している。

 一方で、多様なアイデンティティグループを登用することは、“学習と効果のパラダイム”があると説いている研究者もいるが、一定の条件が揃っていることが前提とされている。

 

 では、ダイバーシティマネジメントの成功とはどのような状態のことを指すのだろうか。

 多様なアイデンティティを持つ人たちと、共に仕事をするといったシチュエーションに直面したことを想定するだけでもダイバーシティマネジメントの成功とは何たるかを理解できるかもしれない。

 

 “あなたはあるコンサルティングプロジェクトのリーダーに任命された。プロジェクトは、メンバーA(中国人の40代男性)、メンバーB(新卒入社の女性)、メンバーC(60代シニアの男性※過去は会社の役員をやっていた)の計4名である。”

 

“それぞれのメンバーの特徴は以下の通りである。

 ♦メンバーA:本国において豊富なコンサルティング経験を持つが、日本では言語の壁があり、豊富な経験を引き出すことが

        難しい。

 ♦メンバーB:明るい人柄で、新鮮な情報やアイデアを多く持っているが、他のメンバーに委縮しており、力を発揮できて

        いない。

 ♦メンバーC:コミュニケーション上、気難しいところがあって、過去の役員時代の体験や経験をあまり教えてくれない。

 

 あなたはこのメンバーと一緒にプロジェクトを遂行する際に何を成功と考えるだろうか?

 まずは顧客からの期待や経済的な目標、品質、納期など、顧客と合意した事項を実現することだろう。だが、ダイバーシティマネジメントの文脈では、それだけでは十分ではない。3人のメンバーが持てる力量を発揮し、期待以上の成果を提供することであり、それが最大の成功なのではないだろうか。

 メンバー3名はそれぞれ強みを持っているが、それぞれの事情を抱えており、リーダーのこれまでのマネジメント成功経験を軸にしたマネジメントスタイルでは、本来の力量を引き出せそうにない。つまり、多様性(ダイバーシティ)を強く意識しなければ、メンバーが持つ力量を引き出せない。

そこで、これからのリーダーは従来のマネジメントスタイルに加えて、以下のステップを取り入れることをお奨めする。

 

 ① それぞれのメンバーの背景、事情、能力、経験などを知ろうとする努力をすること

 ② ①を知ったうえで、それぞれの能力の発露への期待を伝え(ダイバーシティマネジメントの解釈を共有)、背景と事情を

       重要視する方針をメンバーに示すこと

 ③ それぞれのメンバーの多様な意見・視点が出しやすい風土を形成すること(心理的に安全な場をつくり、失敗や利己的な

       発言であっても叱責の対象としないなどの配慮が必要)

 ④ 多様な意見・視点の提供を促すために、予め論点となる目的や、情報量のすり合わせを行うこと(これは的外れな意見を

       収集することなく、また的外れな意見を認める様、主張されないための予防線にもなる)

 ⑤ ④のプロセスを踏んだ上で、集まった意見・視点は検討の俎上にのせること(多くの視点からなる意見を受け入れない

       限り、リーダーの経験則から抜け出せない)

 ⑥ 受け入れた意見は、多角的に検証して活用の可否を決める。採用しない場合はその根拠を明らかにする(これまでの

       やり方をそっくり代替できるほどの意見がでてくることは難しいので、一部でも目的に沿えば活用することも大事)

 

 上記に挙げた6つのステップは多様な人財を活かすための一つの方法に過ぎない。だが、本コラムで多様性の本質を推察したように、ダイバーシティマネジメントの文脈でメンバーをマネジメントする際は、まず、メンバーの強みは何かを積極的に知ろうとし、それらの能力を最大限に引き出すことが成功への道筋になる。

 このように解釈することで、ご自身が管掌する組織メンバーの働きやすさも向上し、組織力も強固なものになるだろう。

 なによりリーダー(自分)と似通った考えや文化を持ったメンバーだけが集まって導き出した結論の方が、多様性がなく危険なものだと考えるべきではないか。

 多様性を受けいれることは、市場における優位性にも繋がるだろう。ダイバーシティマネジメント能力が、一流のマネージャーの必須要件となる日も近い。

 

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