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2008.03.24

またも国民不在の税制論争、国民よ、税制に目を向けよう。

 ガソリンや軽油などの燃料に課せられている道路特定財源の暫定税率が3月末で期限切れになる。与党案は暫定税率を存続させ、かつ一般財源化しようとしている。それに対して完全撤廃を迫る民主党案で国会は真っ向から対立している。与党は完全撤廃した後の財源案を民主党に提出することを迫っているが、民主党は知らぬ存ぜぬで押し通す構えだ。現在のようなこう着状態だと、期限切れになるのは必至で、4月からはガソリン価格は下がることになる。昨年からの原油先物高騰の影響で、ガソリン価格は上昇の一途であり値下がりすることはうれしいことだ。しかし与党の論調は道路特定財源がなくなると道路を作ることができなくなるから暫定税率は存続すべしという、道路を作ることを優先したもので、またまた納税者利益不在の議論に終始している。常に税制論議は税金を使う側(とる側)の論理でなされ、納税者の意見が反映されることはまったくない。あの東国原知事までもが、お国事情丸出しで、道路特定財源の一般財源化反対を表明しており、暫定税率撤廃は考えてもいないようだ。ちなみに道路特定財源の税収は年間約2.7兆円で、需要予測を見直して無駄な道路建設を再検討し、抜本的な構造改革や税制改革をもって捻出できそうな感じではある。

 そもそも国民不在で税制の議論が行われるのは、国民が税金に対してあまりにも疎いことに加え、これまでどんな無茶をやってきても国民が反旗を翻すことがなかったことで、完全に舐めきっていることに起因しているといっていい。日本国憲法では、人権の保証と教育を受ける権利と引き換えに納税の義務をうたっている。しかし義務教育過程の中で税制のことを教えることはない。税制を知りたければ、大学の商学部に入るか税理士や会計士の資格の勉強をするしかないだろう。それほどに日本の税制は接する機会は少なく、教育の機会も提供されずにいる。国民から隔離されているといっていい。これは徴収する側が国民にわからないようにするために、意図的に隠しているととれなくもない。国民が税制に興味を持たないような仕組みが構築されているのである。

 サラリーマンの中で、自己の所得の中からどれだけの税金が徴収されているかを把握している人は何人いるのだろうか?。3月17日に平成19年度の確定申告の受付けが終了した。確定申告をしなければならないサラリーマンは多くはないだろう。多額の医療費を使ったか、複数の事業所から所得があったりしなければ、毎月の源泉徴収と年末調整で納税ができてしまうからである。ここが重要なポイントである。この仕組みによって、サラリーマンの源泉徴収に関する業務は、給与支払者が代行することとなり、サラリーマンは煩雑な税務処理をしなくてすむ。それはそれでありがたい話ではあるが、この仕組みによってサラリーマンが税制に触れる機会がなくなり、税金に対して関心を持たなくなるのである。納税者の大部分を占めるサラリーマンが、税金に関心を持たないというのは、徴税する側からみれば最高に素晴らしい仕組みである。サラリーマンが毎月徴収されている所得税は、前払いであることを知っている方はどれだけいるだろうか?。

 ちなみに総所得額が695万を超える方は、課税対象額(総支給額とは違う)対して23%の所得税と約10%の住民税が天引きされる(厚生年金などの社会保険も天引きされるので、さらに手取りは少なくなる)。サラリーマンに給与を支払う企業は、その営業利益に40%近くの法人税が課せられる。 その後、所得を消費に回していくわけだが、支出には必ず消費税がかかり、さらにガソリン税、酒税、たばこ税、クルマには購入時に取得税がかかり、毎年自動車税がかかる。土地や家屋を所有していれば、固定資産税の対象になる。もちろん退職金にも相続にも、預金の利息にも税金がかかる。正にありとあらゆる場面で徴税されるようにできている。正に考え抜かれていると言っていい。

 給与所得から源泉徴収し年末調整する仕組みが確立されたのは1940年のことで、源泉徴収はドイツの徴税システムをまねたものだ。他の先進国もドイツをまねて源泉徴収の仕組みは導入したが、日本では1947年に独自の改良を加えて年末調整をセットにした独自のシステムを編み出した。毎月の給与から天引きする金額は概算の税率で算出するので、どこかで精算(年末に)する仕組みが必要になる。本来であれば国民全員が確定申告をすればよいのだが、おそらく徴税業務の簡略化をめざしたのであろう、税務署の徴税業務を企業に代行させるような仕組みとした。素晴らしい発明だ。これによってサラリーマンが自己の税金に触れる機会がなくなり、税制に対する希薄化が進むことになった(他の先進国は国民に納税の意識を持たせるために、必ず確定申告を行うようにしている)。以前は生命保険や損害保険の控除は確定申告によって還付されるものだったが、それまでも年末調整で可能になった。便利になる反面、どんどん税制へ触れる機会から遠ざけられているのである。

 お手元に源泉徴収票があれば見直してほしい。所得税と住民税を合わせて多額の所得税が徴収されているはずだ。これは主に国家と地方自治体の運営に活用されている。税制は国家の戦略の中に組み込まれているものだ。納税者はその血税を国家の繁栄と自らの社会的な生活を送るために使ってもらうため、そのさじ加減や塩梅を官僚に委託したのである。電気、ガス、水道、さらに道路や空港、港湾、鉄道などの社会インフラの整備や、国防や国際貢献などにも使われている。それらは日本の戦後の発展におおきく寄与したことはいうまでもない。たとえば安定的に電力が供給されるから、付加価値の高い製品を大量に生産でき、道路があるから製品を港湾や空港に運ぶことができ世界中に出荷されていく。医療の仕組みが整っているから安心して労働することができ、義務教育と最高学府の存在が、労働のための高度な教育を受けることができる。

 これらのインフラのおかげで世界のトップクラスの経済大国になることができた。そういったものにわれわれの血税が使われるのは、しごく真っ当な話だし誰もが納得できるだろう。しかし知らないところで、無駄な税金が使われて食い物にされているのも事実だ。道路のための税金が職員旅行やマッサージチェアに化け、さらに某国の弾道ミサイルから国民と財産を守るために1200億円!もかけて導入したイージス艦が、国民を踏みつぶしていたのではどうしようもない。

日本は今後も発展していってもらわなければ困るし、安心して住み続けることのできる平和な国であってほしい。高齢化社会を乗り切るためには、税金の増額はやむを得ないことだろう。しかし税金を使う側(政治家や官僚)に対して、納税者の不信が重なって、まったく信用できない状態になっている現状では、一方的な増税議論では国民は納得しないだろう。増税を語る前に、税金の使途とそのチェックの仕組みの公明正大さを担保すべきだ。道路を例に挙げれば、20年以上前に計画された無駄としか思えない道路をそのまま作るのではなく、常に最新の情報を元に計画の妥当性をチェックしながら、国家として本当に必要な道路を整備していくべきだ。これから日本を見据えた国家の大計に基づいて青写真を描き直してほしい。

 われわれの税金を政治家や官僚に無駄遣いさせないためにも、国民はもっと税制に対して興味を持つべきである。極論すれば年末調整をやめて、国民全員が確定申告をすることも必要だろう。おそらくそのような形(確定申告書に自分の納税額を手書きで書き込む)になれば、自分がどれだけの税金を払っているかを実態として認識し、その額の大きさに愕然とするだろう。必然的に税金には厳しい目を光らせることになり、役人の無駄遣いを放置できなくなる。今のような納税者不在のズブズブの税金の無駄遣いを行っていれば、それこそ暴動が起こるはずである。政治家と役人にはそのくらいのプレッシャーの下で、我々の重大な財産の運営を任せたい。総理も閣僚も政治家も官僚も、すべてわれわれ国民に雇われていることを忘れてはならない。

マンデー

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