2015.03.02
東京マラソン2015、世界に誇れるスーパシティTOKYOを感じた日(後編)
20キロを過ぎると日比谷公園、帝国ホテルを横目に見ながら日比谷の交差点を右折し、ペニンシュラホテルの前を通過するとハーフ(中間)地点です。山手線のガードをくぐり、数寄屋橋交差点を通り、銀座4丁目に向かいます。このあたりは沿道の人が多く、ごった返しています。市民ランナーの為に交差点を横断することもできずに、ごめんなさいという感じ。銀座和光前を左折して中央通りに入ります。華やかな銀座の中心、百貨店や高級ブランド店が立ち並びます。このあたりは沿道の幅が狭くて応援も大変そうです。中央通りを北上して浅草に向かいます。京橋を過ぎて八重洲が近づいてくると、かつてのクライアントだった企業が見えてきます。このまままっすぐ進むと国道の起点である日本橋1丁目1番地、麒麟の像前ですが、コースは日本橋コレド前を右折します。日本橋は昔の江戸商業の中心で最も賑わった場所。江戸時代の庶民が、大挙して押し寄せてくるランナーを見たらどう思うだろう。「カロリーの無駄遣いしやがって」とでも思うかな。
日本橋コレド前の特設オーロラビジョンには、先頭ランナーのゴールシーンが映されていました。もうゴールしちゃったの?こちらはまだ残り19キロも残っている・・・。やはりワールドクラスはすごすぎる。
東京マラソンは、給水エリアを3キロ毎くらいの間隔で設置しているので、給水はこまめにできますが、給食は23キロ手前から。この地点でエネルギーを補給しておかないと、35キロ以降のエネルギーが不足するという先輩ランナーの事前のアドバイスもあって、ここでバナナ半分を補給しました。しかし、ここから悶絶の苦しみを味わうことになります。バナナが身体の中を下がっていくにつれて、各部の内臓に刺すような痛みが現れます。食道、胃、腸、最後は脇腹。我慢すればいずれは消えるような感触でしたが、23キロ地点から3キロくらいはこの痛みに苦しめられました。痛みも収まったころ、人でごった返す浅草の雷門前を右折して28キロ地点、ちょうど2/3です。ここから折り返して、同じルートで銀座4丁目に戻ります。雷門前でも何やら大きなパフォーマンスをやっていたようですが、人だかりで見えず残念。
浅草近辺は浅草寺や雷門などの古くからの建築物と、東京スカイツリーのような最新の建造物が共存しているエリア。雷門前は絶好のスカイツリー鑑賞ポイントですが、この日はあいにくモヤがかかって第一展望台までしか見えません。東京タワーからスカイツリーまで走ってきたのだと思うと、東京の新旧の対比を楽しませてる演出なんだろうと思います。浅草エリアを過ぎたあたりで、4時間ちょうどで走るペースメーカー集団に追いつかれてしまいます。内臓の痛みのせいでペースが落ちてしまっていたようです。このまま抜かれるのも癪なのでそのまま併走。やがて30キロ地点になります。
<東京マラソンの観戦者サービス>
東京マラソンは観戦者向けサービスにもお金をかけています。ランナーは記録計時の為にICチップを足に付けて走りますが、これによってスタートから5キロ刻みで通過タイムを自動記録することができます(この仕組みほとんどの大会ではだいたい取り入れているが、スタートとゴールだけで計時というのが多く、5キロ刻みは珍しい)。東京マラソンではその情報を応援ナビというアプリで観戦者に公開しています。東京マラソンのような出走者が多い大会では、ランナーの位置情報無しに、お目当てを見つけることは至難の技。応援ナビがあれば、今どの位置にいるという目安ができるので、ランナーを探しやすくなります。また、SNSとの連携も自動化されていて、予め登録しておけば、10キロ毎の自分の位置がFACEBOOKやTWITTERにリアルタイムでアップされます。参加者だけでなく観戦者にも手厚くサポートすることで、大会全体の裾野を拡げ大きく盛り上げる有効な手段です。今やスポーツイベントのIT化は必須で、サービス内容が拡充されれば、ユーザーの活用次第では新しい参加の仕方や楽しみ方につながりそうです。
30キロ通過タイムは2時間42分。30キロを超えると考えはじめるのはペースアップ。残り12キロを1時間20分で走ればよいので、4時間切りは確実ですが、目標の3時間50分はギリギリでしょうか。ただここでペースをあげて残り12キロを走りきれるのかという不安もあります。どうしようか考えますが、実はこのとき、あと1キロ何分で走ればよいのかが計算できなくなっていました。走っているとき計算に集中できないこと、そして、脳を動かすエネルギーも不足気味になっていることも原因を聞いたことがあります。仕方が無いのでこのまま32キロまでペースメーカーに追走して、計算が簡単である残り10キロ地点で考え直すことにしました。
そして問題の32キロ地点。通過タイムは2時間53分。残りは10キロ。この時点で1キロ6分でまでペースを落としても4時間は切れそうなので、たとえ失速しても4時間切りはほぼ確実。ではどこまでペースを上げようか。足の裏は痛みが出てきていますが、まだまだ行ける。心肺はまったく問題なし。行くしかない。1キロ5分で走り切れば、3時間45分が射程圏内に入ってくるので、そこまで上げて様子を見ることにしよう。ロケット2段目に点火して一気にペースアップ。10キロを50分でゴールまで爆走する。前半に抜かれたランナーを一気に1000人は抜き去り覚悟です。
まずは、4時間ペースメーカーを一気に抜き去り、前をゆくランナーをどんどん抜いていく、気持ちのよい瞬間です。日本橋を抜けて、銀座4丁目を左折、歌舞伎座の前を通って、築地交差点付近が35キロ。この区間はマインドも絶好調で、沿道の小さい子供達とハイタッチしたりしながらの走りは、楽しくて仕方が無い。気がつけばもう35キロ地点であっという間でした。すごく楽しい、東京最高、東京マラソン最高!。
この30から35キロまでがこの日の最速ラップを記録していました。35キロまでくれば、残りは7キロですが、ここからが東京マラソンの最大の正念場、アップダウンが続くコースに入ります。本来であれば大したアップダウンではありませんが、疲れた身にはかなりきつい。その第一弾が月島を越える佃大橋。目の前にそそり立つ壁のように見えます。さらに、この区間は自動車専用道路の立体交差なので、歩道が無いため沿道の応援は皆無で寂しい限り。いかに応援に元気づけられているかがわかります。ただ、2段目ロケットはまだまだ余力があるので、前半の飛ばしすぎで失速しはじめたランナーを横目になんなく登り切ります。1キロほど立体交差を走って晴海通りに入り、ららぽーと豊洲前で38キロ。残り4キロですが、そろそろ足がきつくなってきました。沿道ではロッキーのテーマが流れています。このメロディは力がでますね。
豊洲近辺のクライアントに、心の中で「いつもお世話になってます!」声をかけます。豊洲エリアは2020年東京五輪の中心となるエリア。6年後には違う景色ができあがるのでしょう。豊洲を抜けて運河を跨ぐアップダウンを越えて東雲一丁目の交差点を右折すると間もなく40キロ。35キロからのアップダウンで足を使いすぎて、流石に疲労がたまって足の動きもおかしくなってきました。足の裏はかなりの激痛に見舞われています。
<東京マラソン名物の仮装ランナー>
東京マラソンと言えば仮装ランナーが注目です。今年はテロの警戒もあって大げさな仮装は自粛と言う事前のお達しですが、走っていると沢山の仮装ランナーと出会います。富士山のかぶりもの、ピカチュウ、スーパーマリオ、妖怪ウォッチのジバニャン、スーツ姿のサラリーマン、スパイダーマン、バットマン、アナ雪のドレス、セーラー服、亀、タケコプター、全身筋肉の絵が描いてある気持ち悪い全身タイツ(後から知りましたが「進撃の巨人」と言うらしい)などなど。なぜかクロックスで走っているランナーも(完走できたのかね)。仮装ランナーをうらやましく感じるのは、沿道から「ピカチュウ頑張れ、富士山ファイト!」と名指しで声をかけてもらえること。仮装ランナーも「頑張るよ」などと声を返して楽しそうです。また、立ち止まって都内の景色や沿道のパフォーマンスの写真を撮りながら走っているランナーも大勢います。東京マラソンの楽しみ方は、タイムや記録だけでなく、人それぞれ。でも、皆さん楽しそうです。今度当選したら、仮装で走りたいと思った瞬間でした。
40キロ通過タイムは、3時間32分。38キロあたりからタイムが落ちてきていたようです。やはりフルマラソンの疲れは半端ない。あと残り2キロですが、まだ2つのアップダウンが残っています。41キロを過ぎた有明駅近辺の坂が最後のハードルです。少しだけペースを緩めよう、でも絶対に歩かない。沿道では、頑張れー、気合いダー、4時間切れるぞーなどの励ましがすごく、力をもらえます。41キロの坂を上ったら最後のスパートをかけようと決め、最後の給水をとって41キロの坂に挑みます。疲れた身体にはかなりきつく、両足のふくらはぎが攣りそうになり、「歩いちゃえば楽になるよ」と自分の中の悪魔が囁き始めます。
坂を越えると遂にゴールである東京ビッグサイトの正面が見えてきました。正面を左折したらゴールだと思うと足も軽くなってきます。そして、ここで三段目に点火する・・、はずが火が付かない。加速しない。もう足は限界に近いようです。
ゴールである東京ビックサイト正面を左折すると、残りはあと少し。直線の沿道ではゴール間近の応援がすごいすごい。ここはもうランナーも観戦者も一体です。ハイタッチしながら声援を浴びると、これまでの疲れを忘れて力が盛り返してきます。そして、直線を走り切って入り口を右折して、ゴール!、と思いきや、残り0.195キロが残っていた。この200メートルはきつかった。ここまでの疲れが一気に出た感じ。ラストスパートできているかどうかもわからない状態ですが、10人ほど抜いてゴールイン。
結果はネットで3時間45分、グロスでは3時間50分。走り切った達成感はハンパねえ。ゴールインした他のランナー達とハイタッチ、ボランティアの皆さんともハイタッチ。みんなが連帯感に包まれる至福の時です。マラソンはゴールした瞬間に、それまでの苦しみを忘れて、また参加したくなるから不思議。その後、完走記念として沢山の記念品をもらって引き上げます。身体はヘトヘトだけど、テンションは最高。初フル42.195キロはかなりのきつさでしたが、沿道の絶え間ない応援が本当に背中を押してくれました。全員が一体となって参加できる(ONE TOKYO)ことこそ、それが東京マラソンの素晴らしさなんだと思います。楽しかった。東京マラソン最高!。
東京マラソンの喧噪も消え「夏草や兵どもが夢の後」。ランナーはすぐに引き上げますが、大会の後片付けはボランティアの皆さんがやってくれていることでしょう。皆さん最後までご苦労様です。走っていて気になったのは、スタート時に来ていた沢山の防寒具が道や中央分離帯に投げ捨てられており、その量もすごくて感じが悪かったこと、給水所では紙コップを取りますが、飲んだ後にゴミ箱に捨てずに道に投げ捨てて走り去るランナーが極めて多かったことです。片付けるのはボランティアの皆さんですよ!。自宅に戻ってTV中継の録画を見ると、トップランナー達はゴールした後すぐに振り返り、コースに向かって「一礼」していました。おそらく大会を運営した関係者や道路、そして公共の道路を占有したことによって不便を被った人たちにも感謝したのだと思います。自分自身と戦うランナーだからこそ、マナーはしっかりしたいものです。2020年東京オリンピックでは、市民ランナーは走ることはできませんが、この大きなイベントに参加した者として、世界最高ランナーのパフォーマンスを、最高のマナーで観戦したいと思います。
こうしてお祭り、東京マラソン2015は終わりました。昨日よりも確実に東京が好きになっていることを実感できた1日でした。
マンデー