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2007.11.15

会社と会社人間が変わる

 最近の日本経済新聞に気になる記事があった。「株主とは」欄の一節で"90ヶ国の日本買い"である。内容は世界のマーケットは、高騰を続ける原油、米国の住宅ローンの問題、新興国の株式ブームの中で揺れている。そんな中で、市場時代の主役である株主は?である。いわき市にある2003年に上場した衣料販売会社に、突然ノルウエー銀行が持ち株5%UPの株主として登場した。世界的には名もない日本の中小企業に、ノルウエーの主力銀行が株式投資をする。1987年のブラックマンデーから20年、外国人の日本株保有率は長期上昇トレンドをたどり、今では28%に達する。保有国籍は90ヶ国に及び、最近は新顔株主(スーダン、タンザニア、ウガンダ等のアフリカ諸国、ロシア、バチカン=ローマ法王国等)も参入している。
 「皆さんと共にリーデイングカンパニーを目指します」、インドの後発医薬品大手ルビンの社長カマール・シャーマは、買収したばかりの共和薬品工業の社員に英語で語りかけた。取締役10人中5人がインド人で、ムンバイと会議を結ぶシステムがスタートすれば取締役会は全て英語になる。
 投資意欲を盛り上げるのは運用機関であるソプリン・ウエルス・ファンド(SWF)だ。メリルリンチによると世界のSWFは総額2兆ドル4年後には8兆ドルに拡大する見込みである。個人株主も経営者もこの奔流に向きあわざるを得ない。
 これからの株式市場の動向は、"新株主"による日本企業への評価と監視は一層厳しく、経営者に対する注文と要求は、激しく冷厳なものになることは必至である。この社会的現実を含めて会社や経営に対する環境の変化条件は大きく3つ有る。
 それは1990年以降明確になった「知価社会」時代=21世紀の価値基準の大変化であり、株式市場原理の市場支配の浸透であり、IT革命と呼ばれる情報処理の質量の膨大化と通信の迅速化による企業の組織機能の変革である。
 この実態に即応して企業及び経営は、急速に変化対応しなければならない。しかも厄介なことに知価社会価値と株式市場主義は、企業とその理念概念に相反する立場にあり、対応を両立させることは極めてむずかしい。

1)この実態に即応して企業及び経営は、急速に変化対応しなければならない。しかも厄介なことに知価社
  会価値と株式市場主義は、企業とその理念概念に相反する立場にあり、対応を両立させることは極めて
  むずかしい。この事実は、会社は社会学で言う社会集団としての長期的存在であり、構成者(経営幹部、
  ミドル、一般社員の総て)が会社を自らのものとして自覚し、いわゆる集団意識(会社の存続拡大を希求し
  団結する意識)をもち、会社は人間集団として永続する存在である。企業TOPは長期的役割(戦略、ビジョ
  ン、長期予測)を果たし、会社は社会そのものとなる。

2)これに対して株式市場主義体制では、投資家の目的は利潤の追求であり、利食い目的の株式売買が日常
  的に行われる。対象となる企業は利益獲得の手段であり、評価の基準は単年度利益である。すると会社は
  投資家のものであり、1年毎の短期的存在である。企業TOPの役割も年度利益の完遂を求められ、事業利
  益達成のプロとして卓抜したリーダーシップが要求される。社員もまた利益達成の手段であり、中長期の人
  材能力としてよりも、利益目標の遂行責任としてのみの、いわば現職務担当者に過ぎない存在と言える。

 この2面は片や中長期、片や短期と違っており、企業TOPも一般社員も機能や役割として異なる存在にな
 る。

3)更に、ITの普及による在宅勤務により、指示と意思の疎通や人間的なコミニュケーションを、ノートパソコン
  やメール、携帯電話で処理できる。企業の組織も階層として「経営TOP-部課長-リーダー-シニア-
  ジュニア」と、上下のマネージメントで相互に「情報交換―提案―指導指示」を行った階段構造が崩れ、
  「現場=個人」と「中央=経営主体」が直結する時代に変りつつある。この現象は企業が人間集団としての
  機能から個体集群としての生活の手段的存在への転換を意味し、既に会社は単なる生活の手段となり、
  個人の生活は家庭と多方面の趣味や娯楽で構成される時代に変りつつある。

 さて、このような混沌とした時代環境の激変に対して、会社及び現役経営陣、現役ミドル、中堅社員はどう対応すればいいのだろうか。問題の根本的解決は困難である。なぜなら企業が問われている問題は、時代そのものの質的変化(社会価値観の世界的変化)とグローバルな世界経済の動向(株式市場主義経済の趨勢)と我国の社会実態の影響(倫理、社会道徳の欠如、教育の国家指導理念の混沌)という、一企業の努力の範囲を超えた国家民族の問題であるからである。しかし、座して崩壊消滅の危機を傍観する事は出来ない。「会社」と「生活」防衛の為になし得る最大の努力をしなければならない。では、その主体者である、会社と個人はどのような努力をしなくてはならないのか。

 第一は対面による直接コミュニケーションである。社会の総て(国家、民族、会社、学校、家庭)が人間関係から成り立ち、人間関係なくしては存在しない。その人間関係は触れ合う頻度に比例し、重要なのは直接の対面の頻度であって携帯電話やPCメールなど間接手法だけでは成立しない。直接体面に局面打開の方途がある。
 第二に社員のモチベーション、集団へのコミットメントである。それを欠けば利益達成どころか欠損が生じ、株主、投資家の目的と離反する。企業は単に短期的機関ではなく長期的な事業達成機能である。経営TOPは自信もって、その役割を長期責任(経営戦略、ビジョン、事業ポートフォリオ、長期人材育成)と短期責任(年度目標達成=リ―ダーシップ発揮)に分けて両立を計り、社員のモチベーションを高揚させることが重要である。
 第三に、資本家、経営者、社員のバランスである。資本と経営と労働の三位一体の要求が、今日ほど社会的国家的に問われたことはない。企業はこの三位一体の集団として成立している。それぞれの機能「資本投下=成長可能の事業と経営人材の有無の正確な見通しを正しく持つ資本家」と「事業経営のプロとして経営機能の実行者である経営人材」と「企業の組織機能=職務遂行者としての社員」が最適の状態になることによって企業は、「組織構造」として成立する。
 上記の三点を基本に据えた変革を実践していくことで、おのずと道は開かれると確信する。

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