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2007.11.12

東京モーターショーが考えさせてくれたクルマ社会の新たなテーマ

 10月24日、幕張メッセで、第40回東京モーターショーが開幕した。今年の東京モーターショーは、"Catch the News,Touch the Future."をテーマに、実に542台の出展台数、そのうちワールドプレミアと呼ばれる世界初公開モデルが77台も含まれており、40回目という節目の年に相応しい活況を呈している。

 なかでも、もっとも話題を集めているのが日産GT‐Rだ。かつて国産最速を誇りながら、海外では正式に発売されなかったことで、世界中でカルト的な人気を博した名車スカイラインGT‐Rが、スーパーカーの称号を冠し、日産GT‐Rと名前を変えて復活したのだ。そのポテンシャルを見ると、各国を代表するスポーツカーを遙かに凌駕する高性能であり、あのホンダNSXでさえ掲げることがなかったスーパーカーの称号を掲げたこともうなずける出来映えだ。しかも20世紀のスーパーカーと異なり、安全性や環境面にも十分な配慮がほどこされている。まさしくスーパーカーを超える21世紀のスーパーカーと呼びうるポテンシャルを誇示している。
 その他にも、スバル・インプレッサWRX STI、レクサスIS F、トヨタFT‐HS、ホンダCR‐Zなど、厳しい排ガス規制を乗り越えた日の丸スポーツカーは、いずれもスポーティーな走りと環境対応を見事に両立させており、国産スポーツカーの新たな黄金時代を予見させるような存在感を発揮している。
 もちろん海外勢も負けていない。ランボルギーニ レヴェントン、マセラティー グラントゥーリズモ、アルファロメオ8Cコンペティツィオーネ、フェラーリ430スクーデリアなど、魅惑的なクルマが目白押しとなっている。やはりスポーツカーは、モーターショーの華といえるだろう。

 その一方で、今回の東京モーターショーでは、次世代型シティーコミュータの展示も目立っていた。パーソナルモビリティーとして進化を続けるトヨタのi‐REALやドライバーの精神状態と呼応するRIN、縦列駐車が不要な日産のPIVO2、ジェルボディーでできているホンダのPUYO、車とパーソナルモビリティーが合体・分離するスズキのPIXYなど、この分野は、日本メーカーの独壇場だ。

 ところで、この数年間の東京モーターショーをみると、どのメーカーも環境技術に力を入れており、今回もまた環境モーターショーともいうべき様相を呈している。自動車業界にとって、地球温暖化への対応は待ったなしのテーマであり、シティーコミュータの分野はもちろんのこと、本来走りの楽しさを追求するスポーツカーの分野でも無視できなくなっている。今回の東京モーターショーでも、展示されているクルマのほとんどが環境対応をうたっており、自動車業界の根底をなす技術テーマとして完全に定着してきた感が強い。ハイブリッド、燃料電池、クリーンディーゼル、水素自動車、電気自動車など、メーカー毎に、環境問題への対応方法は異なっているが、その技術は、着実に進歩し続けるだろう。

 しかしながら、環境への対応は、あくまでも技術的なテーマであり、クルマの乗り方や、生活そのものを変えるようなトレンドではない。むしろ、今回興味深かったのは、走りを追求するというクルマ本来の姿で人を魅了するスポーツカーと、生活に密着した移動手段としてのシティーコミュータとのコントラストだ。将来、クルマは、スポーツカーやラグジュアリーカーのように、走りとスタイルを極めて行く領域と、シティーコミュータのように、市民の足としての機能性を極めて行く領域に分かれて行くのではないだろうか。

 かつて、多くの日本人にとって、クルマを持つことや、持っているクルマのランクを上げることが、ひとつのステータスだった。しかしながら、近年、クルマを持ちたいと考える人は減少しており、その傾向は、国内の自動車販売台数の低迷からも窺うことができる。その一方で、わざわざローンを組んでクルマを買い、高い駐車場代金を払うより、必要な時にレンタカーを借りれば良いという考える日本人も増えてくるなど、日本人のクルマに対する考えも多様化している。
 これからは、本当に自分の好きなクルマを持つことにこだわる人と、単なる生活の足として経済的で便利であればよいと考える人とに、鮮明に分かれてくることが考えられる。とりわけ、後者のような価値観を持つ人にとって、クルマは、所有することよりも効率的に利用することの方に意味があり、この変化は、目的地までへの乗り捨て型など、新たな移動システムを生み出す可能性を秘めている。

 そう考えると、環境問題以外にも、これからのクルマ社会における重要なテーマが垣間見えてくる。確かに素晴しいポテンシャルを持った美しいスポーツカーは魅力的だが、今の日本の都市構造や道路事情を見る限り、スポーツカーの走りを楽しむ様な場所は限られている。また、シティーコミュータが闊歩する姿を想像させるような交通システムも見当たらない。本当の意味で、これからのクルマ社会の在り方を左右するのは、新たなクルマのコンセプトを活かすことのできる都市や交通システムの開発ではないだろうか。

 東京は、文化や経済を高度に集積した大都市としての様相を強めながら、その郊外には、私鉄系企業の開発によって独自の文化的生活圏を形成しており、一極集中化を防ぎながら、このような街づくりを成功させているケースは、世界にもあまり類を見ない。
 このような街づくりのコンセプトは、これから都市開発を進めて行く中国やインドなどの新興国にとっても魅力があるはずだ。新興国における都市開発は、これまで国内需要の創造に傾倒していたJRや私鉄各社にとって、グローバルなステージでビジネスを展開することができる大きなチャンスとなっていく可能性がある。その時に、どのような交通システムを備えた都市開発を提案するのかは、極めて重要なテーマとなるだろう。
 近い将来、都市開発を担う鉄道会社や自動車産業が連携した、交通システム開発が、日本の新たなビジネスとして、世界の注目を集めることも夢ではないかもしれない。

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