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2009.06.24

企業に弊害を及ぼす「思いこみ」からの脱却

20093月期の決算で、任天堂が売上高、営業利益ともに3期連続で過去最高益を更新した。Wii」と「ニンテンドーDS」が欧米市場で好調だったことが要因で、岩田社長が「ゲーム業界は景気の影響を受けにくい」と会見でコメントしていたのが印象的だった。一方、プレイステーションを擁し、任天堂と共にゲーム業界を引っ張ってきたソニーはどうかというと、ゲーム部門で585億円の営業赤字となっている。まさに明暗がハッキリと分かれたわけだが、この状況について、「ソニーの敗因は、思いこみにある」と述べた記事を発見した。その記事には「ソニーは家庭用テレビゲーム機のユーザー満足は、画像品質の高さと処理速度の速さに比例する、と思いこんでプレイステーション3を創った。しかしながら、ユーザーの多くは、それらよりも画像品質や処理速度は劣るが、ゲームの楽しむ場面を重視した任天堂のwiiを購入した」と書いてある。思いこみが数千億円もの差を生みだしたというのはあまりにも大きすぎる話だが、よくよく振り返るとこの「思いこみ」というものは、及ぼす影響度の差はあれ、企業にとって弊害を及ぼすものとなる。例えば内部統制について、「うちの会社は社員がしっかりしている」「管理体制は万全だ」と思いこんでしまったがために変化に即した対応を怠り、一人の社員のインサイダー取引によって企業名がニュースで報じられた企業もあった。また業務レベルで見ても、思いこみによって自身の主張を述べる際に周りの納得が得られない根拠を列挙してしまう、インプットした情報を誤って解釈してしまう、といった弊害を及ぼしてしまうこともある。このように思いこみは企業にとって大小様々な弊害を及ぼすものなのだ。ではどうすればこの思いこみから脱却できるのか、そのメカニズムから解決策を探してみる。

まず、下記の問題にYESNOで答えていただきたい。

Ø  大リーガーのイチロー選手は無愛想で近寄りがたい

Ø  製造業は規模の経済が働くので、売上が大きいほど単位当たりの製造コストが安くなる

Ø  カジノのルーレットで、赤が連続3回出ているため、次は黒が出る確率が高いだろう

いかがであろうか。もし上記の設問に対してYESがいくつかあるならば、もしかしたらあなたは思いこみに陥りやすい人かもしれない。そんな方はぜひ以下を読み進めて、思いこみ脱却のヒントとしていただきたい。

 思いこみとは見聞きした情報を自分なりに解釈しそれを固く信じ込むことである。つまり情報をインプットし自らの解釈へと変換する、この2つのプロセスで何らかの原因が発生しているということだ。

インプットの段階で起こる問題としては、入ってきた一部の情報をそれが全てと捉えて思考を始めてしまうことが挙げられる。チェック問題のイチロー選手の問題でYESと答えた方は、もしかしたらこれがあてはまるかもしれない。イチロー選手がメディア嫌いなことは知られており、テレビに映る彼はどことなく寡黙で無愛想な場合が多い。そしてテレビに映る彼を見た人たちは、寡黙で無愛想であると決めつけてしまっているのだ。しかし実際はどうかというと、WBCをご覧になられた方はお分かりかと思うが、練習や試合中の彼は仲間思いで、熱い気持ちを持っており、陽気にしゃべりたてる一面も持っている。これぞまさに一部の情報(報道カメラの前で見せる彼の態度)を全てと捉えて思いこみに陥っているということだ。

 次に解釈の段階で起こる問題としては、「省略」「一般化」「歪曲」が考えられる。これは、NLP理論の創始者であるジョン・グリンダー、リチャード・バンドラーが、ミスコミュニケーションの原因として挙げているものである。コミュニケーションと解釈を同じ構造で考えていいのかと思われるかもしれないが、彼らは「人の体験というものは意識の深層部に完璧な形であるのだが、それを言葉として表に表わす際に、省略、一般化、歪曲のフィルターがかかってしまう」と言っており、言葉を発するか発しないかの違いがあるだけで、インプットした内容をもとに自らの解釈へ変換する段階と構造は全く同じことである。

一つ目の「省略」というのは、解釈の際に詳細を省いてしまうことだ。脳の性質として、複雑な情報が多数ある場合に、なるべく少ない情報でわかりやすくて都合のよい安心できる結論を導き出そうとする(脳の節約的安定化原理)。これによって本来押さえておかねばならない内容まで省略されてしまい、思いこみとなってしまうのだ。二つ目の「一般化」、これは一般的に言われていることを全てのパターンに当てはまると思いこむことである。チェック問題の規模の経済でYESと答えた方は、もしかしたらこれがあてはまっているかもしれない。一般的には規模の経済は働くものではあるが、実際に世界最大手の自動車メーカーであったGMは、高い製造コストが利益を圧迫し、競争力を失ってしまったのだ。一般論とは、確かに多くのケースであてはまるからこそ一般論と言われるわけだが、それを全てと思うと間違った解釈につながることがある。三つ目の「歪曲」は、事実情報を経験則や意見などによって歪めてしまうことをいう。チェック問題のカジノでYESと答えた方は、もしかしたらこれがあてはまっているかもしれない。黒が出る確率は常に2分の1であり、それまでの出来ごと(赤が3回連続でている事)と関係はない。しかし過去の経験上、同じ色が連続で出続ける事が少なかったため(理論上、結果は2分の1に収束されていくため)、次の1投で黒が出やすいと勘違いしてしまうのである。これが歪曲による思いこみだ。

 ではこれらの原因をもとに、どのようにすれば思いこみから脱却することができるのか。

まずインプット段階の問題については、入ってくる情報に対し、他の可能性がないかを探ることである。先のイチローの話では、カメラの前のイチローは無愛想だが、家族の前ではどうだろうか、ベンチの中ではどうだろうか、と他の可能性(ここでは他の場面)を考えてみるのである。他の可能性を考える方法としては、5W1Hや一般的に使用されているビジネスフレームワークを参考にしてみるといいだろう。そうすることで断片的な情報にもとづく誤った思いこみを防ぐ手立てとなる。

 2つ目の解釈の段階の問題については、自身の思考の癖を認識することである。癖とは無意識もしくは強く意識することがない状態で行われる習慣的行動のことだが、先ほど述べた「省略」「一般化」「歪曲」が癖として思考の際にでているのだ。ただ、自身の癖を把握していれば、意識することによって回避することができる。私は昔、草野球でピッチャーをやっていたのだが、変化球を投げる前は必ずユニフォームで手のひらの汗を拭くという癖があった。自分では全く気付いていなかったのだが、チームメートに指摘をされてその癖に気づく事ができた。意識すると違うもので、手を拭かずに変化球を投げたり、ストレートを投げる際にわざと手を拭いたりする事で、ピッチャーとして致命的になりかねない癖をカバーすることができたわけだが、思考の癖も同じ事がいえる。つまり、自分はどのような状況でどのような思考の癖が出るかを認識していれば、自分の解釈が思いこみでないかどうかをチェックできるようになるのだ。癖を見つける方法は、他人からの指摘や、自身の思考プロセスを振り返って紙に書きだすなど方法は色々とあるだろう。

 先にも述べたが、思いこみは、業績に大きな影響を及ぼす企業不祥事へつながるものから、業務レベルで上司やお客様に迷惑をかけてしまうものまで、企業に大小様々な弊害を及ぼしてしまう。しかし自身が思いこみに陥りやすいことを認識したうえで対策をとれば、思いこみから脱却する事は十分可能である。自身に思い当たる節がある方は是非上記解決法を試してみていただきたい。

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