PMI Consulting Co.,ltd.
scroll down ▼

2009.04.03

社内の慣習制度の見直しを ~新陳代謝を促し組織の活性化へ繋げる~

「世界同時不況」という言葉が、ニュースに絶えない。一時に比べれば不安は後退したものの、この金融危機で、各社は資金繰りに苦しむ。政府が用意した公的資金による支援体制を、自動車や半導体など大手企業が相次ぎ活用の検討を表明している状況だ。

そもそも、資本主義の下では不況は必然的に繰り返される。各社はその都度、「不況に負けない強い組織」を築こうと施策を打ち出すが、結局場当たり的なものに終わってしまうことが多いのではないか。当たり前の現状に隠された自社の重要な問題を見過ごしてしまっている企業は少なくない。自社の問題を正しく「問題」と認識し、経済危機に左右されない強い組織作りを実現するためには、各社は改めて社内の問題に冷静に目を向ける必要がある。

例えば、慣習的に存在する社内の「賃金制度」の現状を改めて確認してみることは、現状の自社の問題に気付く手段の一つかもしれない。賃金制度は、企業の価値向上の根幹となる「人」のモチベーションを上下させる一つの要素であり、常に企業の有用な人材にとって最適なものである必要がある。現在、雇用形態問わず、自社の有用な人材にとって魅力ある賃金制度を柔軟に取り入れる企業も存在するが、企業規模が拡大すると、利害関係者が多く、その調整に多大な労力・コストがかかるため、現行の制度から身動きが取れなくなる企業は少なくない。特に、伝統ある企業の場合、制度設立時のものをベースに微修正が加えられるのみで、制度の骨子は、基本的には十年以上変わらないものが多いだろう。そうなれば、かつて組織にとってプラスであった制度も時代遅れとなり、組織を弱体化へ導いている可能性も十分にあり得る。労働者が自由に雇用形態を選択できる現在、限定された立場の労働者のみ優遇する制度を主とすることは、優秀な人材への門戸を自ら狭めることになりかねない。

慣習的な賃金制度のうち「定期昇給(以下定昇)制度」は、日本の象徴的制度である。先日の労使交渉の場面でも、急速に業績が悪化している自動車、電機大手では、勤続年数に応じて給与が上がる定期昇給を例年通り実施するか否かの問題が浮上していた。経営側は、結果的に「定昇制度自体は温存する」という最終結論を出したが、年齢や勤続年数に応じて自動的に基本給が上がる定昇制度が、環境変化のスピードが上がり、蓄積したノウハウが陳腐化するスピードも上がった現在の日本と合わないのは明らかであろう。企業の受注・生産・価格等、あらゆる経済指標が低下する中、定昇を前提とした賃金制度には、少なからず疑問が残る。

元々定昇は、1954年に年功序列型の制度として制度化されてから、各社に一斉に導入され始めた。特に「ものづくりの現場」においては、各社の「ノウハウ継承」という観点から、在籍期間に応じた昇給制度はマッチしていたかもしれない。だが、2004年に製造業派遣が解禁されて以降、ものづくりの現場は正規社員から派遣社員への切り替えが進んでいる。よって、各社の定昇制度が、派遣社員を扱う派遣元企業に同様に適用されない限り、かつての「ノウハウ継承」のメリットに結び付けることは出来ない。今でこそ慌てて「製造派遣、原則ゼロ」を掲げ、現場の派遣聾者を正規社員に移行させようと試みる企業もあるものの、その行き先は不透明である。では現行の定昇制度が有効となり得る点は何だろうか。正規労働者のモチベーションの維持等、もちろん考えられることはある。しかし、プラスの影響よリもマイナスの影響の方が大きいのではないか。それは、「本来企業の価値創造に徹しなければいけない社内の人材が稼働しておらず、社外からの新規戦力も取り入れられていない状態」、つまり「企業の新陳代謝が抑制されている」という実態があるからだ。実際の現場を見ると、定昇制度の下、在籍期間・年齢に応じて基本給が上昇し、市場価値の2~4倍もの給与が支払われているケースが往々にしてある。目まぐるしく変化する環境の中にあっても、常に、在籍期間・年齢に応じた基本給のアップが保証されているのであれば、この定昇制度が、社員一人一人の能動的な行動を抑制させてしまうのも当然だろう。また、このような給与に見合わない比較的職位の高い社員の存在が、新たな戦力となる人材の採用を抑制していることもある。

恐らく、定昇制度を採用する企業には、上記のような状況が見られる企業が少なくないはずだ。
また、そんな実態が当たり前のようになっているとすれば、定昇制度そのものが、企業に衰退を招く大きな要因のひとつとなるといっても過言ではない。各社は、今こそ時代に見合わない賃金制度を重要な問題として取り挙げ、組織の新陳代謝を促す施策を打つべきではないか。それが、組織の活性化に繋がるはずだ。

どんな企業も、企業価値を創造するのは「人」である。細かな制度規定は、各社一様ではないだろうが、組織の新陳代謝が正常になされていることは企業が存続するために非常に重要なことである。

ここでは、組織の新陳代謝を継続的に高める施策として、定昇に代わる「同一労働同一賃金」の考えを提示したい。同一労働同一賃金とは、雇用形態問わずに、職務や成果、能力を同じ基準で評価・処遇することである。これは、今まで社内の地位に甘えてきた正規社員に、現状のままでは、現在の給与が保証されないことを示唆する。よって、導入に当たっては、正規社員のモチベーションにも配慮し、正規社員が正規社員であることのメリットを残す必要があるかもしれない。導入による正規社員の急激なモチベーション低下は、組織全体に影響を与えかねないからだ。しかし、もたらす成果に応じて処遇することは, 現在の地位に甘んじてきた正規社員に少なからず刺激を与えることが出来、結果的に組織の新陳代謝を活発にすることが可能となる。既に、一部の企業では「同一労働同一賃金の考え方」を採用し、制度化にも精力的に取り組んでいる。今後、社会に同一労働同一賃金の考え方が定着すれば、企業にとって優秀な人材の働く意欲が今以上に喚起され、活かされる環境が作られるはずだ。更に、教育制度、出産育児などライフスタイルに応じた人事制度の充実を図ることにより、企業と労働者の関係が強化され、企業側は安定的に幅広く優秀な人材を確保することも出来るだろう。

今後各社にとって、優秀な人材の働く意欲を如何に喚起し、生かせる環境を提供できるかが、ますます重要な課題となる。解決策として、現在の賃金制度に「同一労働同一賃金」の考え方を推し進め、組織の新陳代謝を促進させることは、非常に有効な手段の一つとなろう。
 

マカロン

                

Recruit

採用情報

お客様と共に成長し続ける新しい仲間を求めています

Contact

お問い合わせ