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2025.03.31

タイプロから学ぶチームづくり

 タイプロという名前を聞いたことがあるだろうか。タイプロは、男性アイドルグループ“timelesz”(タイムレス:旧名Sexy Zone)の追加メンバーを決めるオーディション企画番組であり、timelesz(タイムレス)project(プロジェクト)を略したものだ。Netflixで世界各国に配信され、SNS等でもバズっている。

 

 timelesz(タイムレス)は旧ジャニーズ事務所のアイドルグループであるため、筆者のような40代のオッサンは興味を持たないように思われるかもしれない。しかしこのタイプロ、そんなオッサンの心を鷲掴みにし、胸が高鳴り、魂を奮わすものであった。一見若いアイドルの卵のオーディション番組と思っていたが、実際はそんな代物ではなく、ビジネスにも活かせるネタの宝庫、いやチームづくりのバイブルと言っても過言ではないほど、大の大人でも楽しめるコンテンツなのだ。何気なく見始めたが完全にドはまりしてしまった。

 

 そこで、興奮が冷めやらぬうちに、タイプロを視聴したチームづくりに関する気づきを徒然なるままにまとめてみることにした。本稿を読んで、タイプロを見たことのない方にとって興味が湧いたとか、見たことのある方がさらに楽しめるきっかけにしていただけたら本望である。以下、気づいたポイントを3つ紹介してみたい。
(あくまで筆者の私見であり、妄想も入っている部分もある。その点は平にご容赦いただきたい。)

 

 

1 組織を成立させる3要素

 まず注目したことは、個からチームに変貌を遂げたことだ。メンバーは“ファンや視聴者を感動させるアイドル集団になる”という目的に向けて、1人ひとりが高いパフォーマンスを発揮できるように、常に誰かに見られている視点を持ち、本番を意識したトレーニングを愚直に行っていた。また、チームのパフォーマンスに磨きをかけるために、率直な意見を言い合い、お互いの価値観を赤裸々にぶつけ合っていた。一人ひとりが自身の弱みに向き合い、強みを全力で発揮しようともがく、そして時には惜しみない協力で、互いに足りない側面を補い合っていた。このような過程で、メンバー同士が相互に刺激や影響を与える相乗効果が生まれ、個の寄せ集めからチームに変わっていったのだ。

 古典的な考え方を引用すると、経営学者のチェスター・バーナードが提唱した組織の3要素である「共通の目的」、「協働(貢献)の意欲」「コミュニケーション」をタイプロは全て満たしていた。因みに、この成立要件の3要素を満たせたのは、timelesz(タイムレス)のオリジナルメンバーの3人や、ボイストレーナー、振付師、大先輩(木村拓哉/堂本光一等)のプロ意識や想いに、メンバーが間近で薫陶を受けて、“自分はアイドルになる”という決意を強めていくプロセスが盛り込まれていたからだと考える。印象的だったのは、「自分の殻を破れよ」という言葉が何度も飛び交い、全員がその言葉通りの行動を体現していた。今風に言うと、パーパスとバリューが強く結びついていたのであろう。

 

2 揺さぶりのデザイン

 タイプロの5次審査は、オリジナルメンバーの3人がリーダーとして、各々担当するチームをプロデュースするという企画のもと、4人の選考メンバー×3チームに分かれて実施するものであった。チーム毎に違う楽曲をパフォーマンスするのだが、途中別チームの仕上がりを見学したり、別チームのリーダーからのフィードバックを受けることで、各チーム内に焦りや危機感が醸成されていた。その状況を見た各リーダーは、メンバーに寄り添いながらも発破をかけることで、チームは一枚岩を帯びていく。

 これはまさに、クルト・レヴィンの組織変革の3段階のプロセスと類似しており、組織を揺さぶることで旧来の価値観が見直され(解凍)、新たな価値観や行動様式を取り入れて変化させ(変革)、その変化を定着させた(再凍結)好事例だ。

 この考え方を応用して自チームを変えるには、まずは他のチームに触れる機会を意図的に設定することでチームに揺さぶりをかけるとよい。揺さぶられたチームは動揺するが、混沌とした状態の中でリーダーが一定の方向性を示していく。そして、チームとしての価値の再定義を全員で行うことで、新たな行動を定着させながら、結束力の高いチームができあがっていくのだ。企業が縦割りを解消して組織間の連携を促進する理由は、揺さぶりのデザインによる組織変革において一定の合理性があるからであろう。

  

3 包摂性こそチーム変革の本質

 タイプロは、旧ジャニーズ事務所の伝統を重んじながらも、これまでのものとは異質な血を入れて大変革を遂げたという面で、伝統と革新が感じられた。これまでの組織体質に慣れた人材ばかりではなく、違う能力を持ちながらも、プロジェクトをより良くしたいという高い熱量を持った人材との新旧融合により、効果的なチームづくりを成し遂げていたのである。

 これは、多様性だけでなく包摂性の重要さを表しているのではないだろうか。簡単に定義しておくと、多様性はさまざまな背景を持つ人々を受け入れることで、包摂性は互いに尊重し合う中で、個々が能力を最大限に発揮できる環境を作ることだ。組織の新旧融合には、新しい人材を受け入れるだけではなく、その人材が活躍できるように促すことが重要であり、包摂性がなければ多様性は機能しないと考える。

 オリジナルメンバーの佐藤勝利が、メンバー選考結果を発表する際に、新しく加入する篠塚大輝(歌やダンスの未経験者)にこんな言葉をかけていた。「僕たちがあなたを背負うから‥」と。スキルの有無に関係なく人間的な魅力や可能性にかけて、その人を丸ごと背負う覚悟が、多様な力を発揮させる土壌になるように思う。それこそが“包摂性”であり、チーム変革の本質なのではないだろうか。

 

 以上3つの視点から気づきを紹介してきた。もちろん他の視点もたくさんあるが、タイプロはやはりチームづくりにおいてさまざまなアプローチに活かせるものと考える。例えば、チームビルディングのワークショップ等で、メンバー全員でタイプロを視聴し、“プロフェッショナルな集団とは何か”といったテーマで対話をすれば、プロフェッショナルとかプロフェッショナルな集団といった曖昧な言葉に対して、共通認識をチームで築き、その認識をもとに個々の行動につなげるきっかけづくりができるかもしれない。

 

 因みに、新生timeleszの初楽曲である“Rock this Party”には、自分自身を解放し、忘れ去った夢を叶える勇気をメンバー全員で追い求める様子が描かれている。歌詞の一節にあるように、タイプロを通してメンバー全員が “We're timelesz(自分たちがタイムレス!)”と最高のチームになったことを宣言しているようであった。

 

 最後に新メンバーの5名を加えて8名となったtimeleszを見て改めて思ったことがある。タイプロの最終選考に残ったメンバーは皆がプロフェッショナルであり、同時に周囲からの助言を聞き入れる素直さと愛される人間性を有していた。しかし、最終的な選考の決め手は、仲間探しがテーマであったため、個の能力やスキルではなく、メンバー同士の親和性や全体的なバランスが重視されたように思う。カリスマ的な個人がいたからといって、理想とするチームにはならないのであろう。いやはやチームづくりは奥深いものである。

 さて、季節も暖かくなり明日からは四月に入る。新生活の始まりや新体制への変更を楽しみにしている方もいるだろう。そんな出会いや別れのある時節に、タイプロを見てみてはどうだろうか。きっと、あなたの心を揺さぶり、新しいスタートを切る起爆剤になるはずだ。

 

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