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2018.05.11

新入社員に自社が選ばれた理由をご存知ですか?

GWも終わり、通勤電車にビジネスパーソンたちが帰ってきた。休みでしっかりとリフレッシュして意気揚々に見える人もいれば、また仕事かと休みに未練を残しているように見える人もいる。4月から入社した新入社員たちも、つかの間の休息から、また仕事に気持ちを切り替えるのに苦労している事だろう。通勤電車の中で、新入社員と思われる若者の様子を見ていると、スマホに集中している人が大半の中、何か深刻な考え事をしているように見える人に遭遇することがある。ひょっとして仕事がつらいのかな、辞めたいとか考えているのかな、と勝手に心配になってしまう。何しろ、新卒の場合、入社3年目までに約3割が退職してしまうというのである(ちなみに、1年目では約1割が退職する)。時間もコストも掛けて採用した社員が、3年目までに3割も辞めてしまうのだから、企業側にとってはたまったものではないだろう。

ところで、この入社3年目までに約3割が退職するというのは、最近の傾向のように思われがちだが、実は以前からある傾向のようだ。厚生労働省によって発表されている「新規学卒者の離職状況(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html)」によると、新卒3年目までの離職率は、平成8年(1996年)以降は常に30%を超えている。また、昭和62年(1987年)~平成7年(1995年)の期間も、離職率は約25~30%の間で推移している。つまり、最近よく耳にする「新卒がすぐに辞める」というのは、ここ30年くらい変わらない傾向なのだ。

その間、当然企業は無策でいるわけはなく、この30年の間に変化した環境や新卒者が退職する理由を分析しながら、様々な取り組みをしてきている。それにもかかわらず、個々の会社では改善されていることもあるだろうが、全体として見たら実際には離職率の傾向が変わっていない。ということは、昨今特に言われているような雇用条件や勤務状態が主な理由で、新入社員が辞めるわけではないのかもしれない。

では新卒者は、どのような理由で辞めていくのだろうか。就職・転職に関する口コミ情報サイト「Vorkers(https://www.vorkers.com/)」が発表した、平成生まれの新卒者が入社3年目までに退職した際の「退職理由ランキング(https://www.vorkers.com/hatarakigai/vol_14)」によると、以下のようになっている。

順位 退職理由
1 キャリア成長が望めない 25.5%
2 残業・拘束時間の長さ 24.4%
3 仕事内容とのミスマッチ 19.8%
4 待遇・福利厚生の悪さ 18.5%
5 企業の方針や組織体制・社風などとのミスマッチ 14.0%
6 休日の少なさ 10.0%
7 社内の人間関係の悪さ(上司との関係含む) 8.8%
8 企業・業界の将来性のなさや業績不振 8.3%
9 評価・人事制度に対する不満 7.2%
10 体力がもたない 6.7%
11 体調を崩した 6.2%
12 ワークライフバランスの難しさ 5.9%
13 倫理観のなさ 2.6%
14 その他(結婚、家庭の事情など) 4.9%

 上位5位を見ると、2位に「残業・拘束時間の長さ(24.4%)」、4位に「待遇・福利厚生の悪さ(18.5%)」と勤務状況、雇用条件に対する不満が入っている一方で、1位に「キャリアの成長が望めない(25.5%)」、3位に「仕事内容とのミスマッチ(19.8%)」、5位に「企業の方針や組織体制・社風などとのミスマッチ(14.0%)」と、自身の成長や仕事・職場とのミスマッチに関する内容が入っている。これらは、企業側からしてみると「そんなことはない」と言いたくなる項目かもしれないが、新卒者からしてみると「こんなはずではなかった」ということがあったということだろう。つまり、新卒者が入社前に抱いていた企業のイメージと、実際に配属された職場で抱くイメージにギャップがあり、そのことが不安、不満に繋がって退職を考えるきっかけになっていることがうかがえる。企業側が、そこに有効な対策を打つことができていないとすると、企業側は、退職理由は調査して対策を考えている一方で、新卒が自社に対してどのようなイメージを持ち、どのような期待を持って入社しているかを、良く理解していない可能性がある。実際、新卒者の離職について、多くの企業と意見交換をする機会があるが、退職理由はしっかり把握されているものの、新卒・学生がどのような期待を持って自社を選んでいるのかについて、お話になる担当者はほとんど見かけない。このギャップを埋めることが、実は新卒の離職防止に繋がる有効な対策になるかもしれない。

では、学生側は、どのような考え、理由で企業を選択しているのだろうか。株式会社ディスコ(http://www.disc.co.jp/)が発表した「2018年卒業採用マーケットの分析―就職・採用戦線総括―(http://www.disc.co.jp/uploads/2017/11/2017.11_bunseki2018.pdf)」によると、就職先を決めた学生のうち、当初の志望業界に進めたのは、2割程度に留まっている。

具体的にみると、2016年11月時点の第1志望業界と2017年10月時点で実際に就職先として決めた業界が一致しているのは24.8%に留まっている。しかし、これは単純に第一志望通りに就職できなかった、ということではなく、4人に3人は就職活動中に志望先を変えて「企業を選んだ」とみるべきだろう。

というのも、また、同レポートによると就職活動をした学生の半数近くが個別企業のセミナーにできるだけ参加することを重視し、約4割の学生も学内企業セミナーにたくさん参加することを重視している。その上、今は企業の様々な情報がインターネットで取得でき、個人が得た情報もSNSを通じて容易に共有できる環境が整っている。つまり、学生は個別の企業について可能な限り情報を集め、自分の希望に合った企業を選んでいるのだ。

そして、更に注目すべきこととして、このような情報収集を行いながら就職活動をした結果、最終的にどのような理由で就職先を選定したか、という点である。

同レポートによると、学生の就職先選定について、以下の①、②の時点で調査を行っている。

①就職決定企業に決めた理由(9月)

②就職先企業を選ぶ際に重視する点(1月)

順位 理由
1 安定している                 31.6%   47.6%
2 職場の雰囲気が良い              27.9%   29.8%
3 社会貢献度が高い  27.8%   20.6%
4 仕事内容が魅力的                          25.7%   18.9%
5 給与・待遇が良い                  24.6%   36.7%
6 将来性がある           24.3%   43.9%
7 福利厚生が充実している 22.4%   26.8%
8 業界順位が高い          19.9%   16.8%
9 有名企業である              19.8%   17.8%
10 希望の勤務地で働ける              19.3%   12.9%
11 大企業である                   18.6%   21.5%
12 休日・休暇が多い                  16.0%   24.4%
13 世の中に影響力が大きい         15.7%   13.7%
14 企業理念に共感できる              14.0%   12.7%
15 希望の職種に就ける                  12.9%   5.4%
16 製品・サービスの質が高い     12.4%   9.6%
17 業績・財務状況が良い              11.0%   26.6%
18 優秀な人材が多い               10.4%   7.8%
19 若手が活躍できる     10.4%   5.7%
20 高いスキルが身に付く       9.8%    8.7%

以上の結果を見ると、上位5位では、①と②にともに就職先選定理由の1位は「安定している」であったが、就職活動の初期段階では半数近く(47.6%)が選択したものが、最終的に就職先を決定する際には31.6%まで減少している。他の項目を見ると、「給与待遇が良い」、「将来性がある」、といった項目も、就職活動の初期段階から、大きく減少している。一方で、3位の「社会貢献度が高い」、4位の「仕事内容が魅力的」は、就職活動の初期段階よりも、就職先決定時点の方がポイントを伸ばし、給与待遇や将来性を逆転している。また、他にも世の中への影響力や企業理念への共感なども、就職先選定時点の方が就職活動の初期段階よりもポイントが高くなっている。

これは、学生が、当初は労働条件に関する項目を重要視していたものの、自分でたくさんの情報収集をしたり、個別企業や学内のセミナーやインターンシップなどに参加したりしているうちに、それらよりも自身の価値観や望んでいるキャリア(将来像)とその企業が本当に合っているかを、真剣に見極めて決定したということだ。

見方を変えれば、当初志望先とされていなかった企業も、雇用条件に劣る企業も、自社の強み、魅力のアピールをしっかり行うことで、学生を翻意させることができている、ということでもある。

それにも関わらず、新卒者が3年のうちに前述の理由で退職してしまうということは、一体どういうことか。これは、セミナーなどで学生向けにアピールしてきた自社の強みや魅力、つまり企業としての理念、組織風土、文化、ポリシーといった資産が、実際の現場では損なわれてしまっている可能性が高い。これでは、新卒者が「こんなはずではなかった」と思い退職するのも無理はない。

新卒者の退職に悩む企業は、今まで自社が大事にしてきたはずの理念、組織風土、文化、ポリシーが、現場で損なわれていないか、社員たちが体現できているかを見直す良い機会かもしれない。今回、新卒者の退職理由や就職先を選定している理由を振り返り、改めて企業が社外に発信しているメッセージが、社内においても充分に浸透し実践されていることが、いかに重要なことであるかを考えさせられた。その企業が社外から認知されているイメージ、魅力と、社員自身が周囲から認知されているイメージ、魅力が重なっていることは、その企業を選択した社員本人にとっては、ありたい姿に近づいており、居心地がよく、やりがいを感じる環境にあると言っていいだろう。このことは、単に新卒者の退職を防ぐだけでなく、既存社員を活性化させ、組織力を向上させていく1つの施策にもなる。

職場に新入社員が来て1か月半が経った。新入社員たちと何気ない話をする中で、そもそもなぜ自社を選んだのか、自社にはどのようなイメージ、魅力があり、どのような期待をもって入社したのか、といったことに少し耳を傾け、自分自身がそのようなイメージ、魅力を持っているかを考え、襟を正すのも必要かもしれない。

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