2015.02.26
東京マラソン2015、世界に誇れるスーパシティTOKYOを感じた日(前編)
東京マラソンは今年で7回を数える、首都東京屈指の大イベントです。これほどのイベントは世界でも数えるほどしかなく、ワールドマラソンメジャーズという、マラソン版「グランドスラム」にも認定されました。かつては、ボストン・ロンドン・ベルリン・シカゴ・ニューヨークの5大会により構成されていましたが、2013大会から東京マラソンが加わり、世界6大マラソンへとなりました。今年も海外からの世界記録を狙えるランナーが集結し、大会を大いに盛り上げました。また、東京マラソンの最大の特徴と言っていい、35,000人もの市民ランナーと、その勇姿や楽しむ姿を応援する100万人以上のギャラリーが一体となる、全員参加型のビックイベントとして、その人気は年々高まっています。東京マラソン2015の抽選競争率は10.7倍にも達し、ランナーとして参加することが難しい大会になっています。東京マラソンに限らず、大阪や神戸など1万人以上が走る大型市民マラソンは、軒並み高い競争率になっています。なぜ、市民マラソンはこれほど多くの人を惹き付けるのでしょうか。運良く東京マラソン2015に参加する機会を得たので、その理由を体感すると同時に、TOKYOという街を見つめ直してみました。
2015年2月22日、早朝から生憎の雨模様となりましたが、スタート時には雨もあがり、綺麗な大気の中で走ることができる、マラソンにはまずまずの天候となりました。9時10分のスタートに向けて、都庁前には7時くらいからランナーが集まり始めます。もちろんボランティアはもっと早い時間からスタンバイです。日本中から3.5万人が集まるので、集合場所はすでに大混雑。テロの警戒もあって厳戒態勢での今大会、ペットボトルの持ち込み禁止は事前にアナウンスされていましたが、折りたたみ傘(長さが30センチを超えるもの)も持ちこみ禁止。捨てるかクロークに預けて着払いで宅配してもらうしかないという説明です。スタート前のトイレの大混雑も有名で、少なくとも30分待ちます。7回目ともなると、運営側も手慣れたもので、大した混乱もありません。
着替えとトイレを済ませてスタート位置に上がると、スタート1時間前にも関わらず都庁前の長い直線はすでにランナーで埋め尽くされています。この状態ではアップはおろか、準備体操もできません。軽く足首を回したり、アキレス腱を伸ばすことしかできず、スタート後に走りながらアップしていくことになります。自分はE列(タイム申告順)なので、スタートラインから500メートルくらい後方。やがて、開会式が始まり舛添都知事のスピーチ(簡潔なスピーチで良かった)に続いて国歌斉唱。素人がスポーツで国歌斉唱するのは滅多にないこと。キャップをとって国家を聞いていると、日本代表になったような気分で、一気にテンションはヒートアップです。
9時10分にスタート。目標タイムは3時間50分で、初フルマラソンでサブ4(4時間切りのこと)狙いです。これだけの大人数が集合しているので、スタートの号砲からスタート位置を通過するまで5分くらいかかりました。スタート位置を通過しても大混雑は変わらず、走ることはできますが自分のペースとはほど遠い。靖国通りに入って、山手線の大ガードの直前1キロ地点まではノロノロです(入りの1キロは6分以上かかりました)。靖国通りの両側6車線をフルに使ってもランナーが溢れている光景は、圧巻というか凄まじいというか、大人数のパワーに圧倒されます。正にどこまで行っても人・人・人。
1キロを過ぎると次第に人波に隙間ができはじめ、ペースを上げることができるようになってきます。都庁前から皇居の約8キロまでは、緩い下り坂が続きます。その標高差は40メートル。新宿は意外に高い位置にあるんだと思いながら、下り坂であまりペースを上げすぎ無いように注意。スタートして間もない疲れが無い状態で調子に乗って突っ込み過ぎると、後半にバテて失速するというマラソンのペース配分の不文律があります。それでも5キロの飯田橋までにはスタート混雑遅れを取り戻しておこうと、1キロ5分程度のペースで走りましたが、飯田橋の5キロ以降は5分20秒前後までスピードを抑えてスタミナを温存します。スピードを落とすと途端に追い抜かれるようになります。後から後からどんどん抜かれるので、闘争本能に火が付きそうになりますが、ここはじっと我慢。35キロからのロケット2段目の噴射でまとめてゴボウ抜きすることを密かに誓い、エネルギーを温存することを優先します。飯田橋を右に曲がると九段下近辺を通ります。このあたりは以前のクライアントだった企業があり、何度も通ったところです。沿道では”ヨサコイ”のパフォーマンスや、和太鼓連打などをやっていて、パワーをもらえます。やる気が出てくるから不思議です。
7キロを過ぎると間もなく市民ランナーの聖地・皇居に出て視界は一気に開けます。なにより皇居の旧江戸城と緑、そして正対する高層ビル群の無機質なコントラストが際立っていて、美しい風景を演出しています。そんな中を走るのは、最高に気持ちの良い瞬間です。丸の内にはかつてクライアントだった会社がいくつかあり、ずいぶん仕事をもらってないな・・・、などと思いを馳せながら、ピッチを刻みます。皇居外苑では皇居警察音楽隊が大東京音頭を演奏しています。音頭系は乗りがいいので、マラソンの応援には適しているのかもしれません。祝田橋を左折して日比谷を右折するとそろそろ10キロ地点です。
<東京マラソンのお財布事情>
ビックイベントである東京マラソンの財布事情はどのようになっているのでしょうか?東京マラソンの参加費は1万円で、マラソンの参加費用としてはかなりの高額です。2013年度の計算書では、全体で約24億の支出に対して、スポンサーからの協賛金が約15億、参加料収入は約4.2億、EXPO収入が約2.1億、地方補助金などの税金も約1.5億投入され、最終損益は5000万の黒字となっています。なお、大会をサポートするボランティアの人件費は、ゼロ円。約1万人の一般公募されたボランティアの支援がなければ、大赤字になってしまい開催も危うい大会なのです。
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10キロ通過タイムは52分で当初の計画より少し速いが、足の調子も順調、心肺も全く問題なし。なにより10キロを過ぎると沿道の観戦者も一段と増えて、走るのが楽しくなってきます。ここから日比谷通りを下り、第一京浜に入って品川まで南下します。これまでの傾向として、南下中は追い風、品川からの折り返しは向かい風になるので、南下中には沿道の木の揺れ加減を見ておくと参考になるというのが、東京マラソン経験のある先輩ランナーからのアドバイス。流石に東京マラソン経験者のアドバイスは鮮度が違うと感心しましたが、沿道の街路樹は落葉してしまっていて、葉っぱなんて無いよ!!。体感では風が強いという感じでも無いので、気にしないことにします。10キロ地点を過ぎてすぐ、品川まで行って折り返してきた先頭の招待選手達とすれ違います。あまりのスピードにびっくりですが、黒人選手と一緒に日本人選手も混じって健闘してうれしくなります。黒人選手の足の長さと細さを見ると、長距離に適した体型そのもので、草原を疾走する草食動物のように軽やかに走って行きます。
芝増上寺では、僧侶が門の上から手を振ってくれています。ありがたや・・。東京タワーの姿を横目に見て、芝公園を過ぎると以前にクライアントだった会社が見えてきました。田町を過ぎると、沿道では○○町の婦人会が盆踊り?日本舞踊?。なかなか風情があります。
三田、田町近辺は、山手線の新駅が計画されている、これから大きく開発されるエリアです。これから10年ほどで、全く違った風景が見られるようになるのでしょう。コースは品川駅の手前で折り返し、同じルートを北上して日比谷に戻ります。折り返し地点には名物の“はとバス”が二台停車しています。棄権や制限タイムをオーバーしたランナーを回収する曰わく付きのバスです。これだけには乗りたくない。折り返すとすぐに、沿道では子供達によるチアリーディングです。親御さんは、マラソンの応援よりも、子供の応援に忙しいようです。しかし、子供達の応援には力をもらえますね。御成門、内幸町過ぎ、お世話になっているクライアントのビルの前を通過すると、まもなく20キロ地点です。
<東京マラソンの経済効果>
東京マラソンを開催する意義はどこにあるのでしょうか?ランナーと観戦者の両方が楽しめるビックイベントではありますが、その実益として見逃せないのが経済効果です。「東京マラソン2013」の経済効果は271億円にのぼったという推計(関西大学宮本勝浩教授による試算結果)があります。これは大阪マラソンの約2倍で、名実ともに日本一のマラソン大会と言える規模ですが、運営には1億円以上の税金を投じていること、繁華街や主要幹線道路を長い時間通行止めにして一般利用者に不便を強いること、警察消防などの関係官庁の人手も動員していることなどから、直接的な経常収支以上に大きな経済的恩恵が必要でしょう。東京マラソンは都内在住のランナーよりも、地方や海外からの参加者が多く、移動交通費、宿泊関連、さらに東京マラソングッズ収入が見込めます。また沿道観戦者も沢山のお金を使います。最も人口が多い東京で開催されることにより、企業広告としての価値も絶大です。今やマラソン大会は、地域興しに活用されるほどで、地域性や独自の特徴をだしてランナーを誘致しようとしています。地方のマラソン大会が、市民ランナーの祭典として認知されるには、少なくとも5回以上は開催して人気を上げていく工夫が必要です。1万人規模の大会まで成長させて、はじめて地方経済の活性化に貢献できるビッグイベントになります。
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20キロ通過タイムは1時間46分で、10キロまでのペースと比較すると少し遅れていますが、最初の5キロが速すぎたので問題なし。むしろペースは安定していて、足も心肺も余裕です。もう少しペースアップしようかという誘惑に駆られますが、じっと我慢。そして20キロ過ぎからが、東京マラソンの白眉、銀座のど真ん中を突っ切る後半戦です。
~後編に続く~
マンデー