2010.05.24
草食系男子の未来
明治大学の諸富祥彦教授の「心理学概論」の授業では、結婚力をつける「婚活」ならぬ「婚育」を行っている。何故、そのような事を行っているのか。諸富教授によると、社会に出てから婚活をする前にどうしても身につけるべき大切な経験に「告白」があるという。今の若い男性はその経験を回避してしまい、結果的に婚活力を身につけられていないらしい。「男性から女性に対して自分の思いを正面から伝える力」の有無に婚活力の鍵がある訳だが、草食系男子にはそれが欠落しているというものだ。 話は変わるが、日本の文献で最も古い「告白」については古事記の国生みに記されている。イザナギノミコト(男性)とイザナミノミコト(女性)が天の御柱をお互いに反対に廻って両神が出会ったときにイザナミノミコト(女性)の方から先にイザナギノミコト(男性)に誘いの言葉をかける。そしてお互いの体の状態を確認して、片方の足りない部分に片方の剰余を持って補う方法で国を生むという話である。ところが、生まれた子供は足の立たない「蛭子」であった。両神は天津神のもとを訪ね、その理由を聞いたところ「イザナミノミコト(女性)からイザナギノミコト(男性)を先に誘った事がその原因である。次はイザナギノミコト(男性)から誘うように」と教わる。その後、教えられた手順に従い、再度天の御柱をお互いに反対に廻って今度はイザナギノミコト(男性)から「告白」したところ、その後は健康な子供(国)を次々と産む事ができたと伝えられている。日本ではこの時から告白するのは男性の役目となったと伝えられている。
およそ1300年の時が経ち、天津神の教えに反する出来事が日本のあちらこちらで起きている。草食系のイザナギノミコト?想像するだけでも何とも頼りないではないか。 ところで「告白」とは何なのか。それを定義せずして草食系男子の改善は望めまい。一般的に考えれば「告白」とは「必ずしも相手に受け入れられる保障がない事を、自分の思いと共に伝える事」と定義できる。大切なポイントは「相手に受け入れられるかどうかの保証はない」点にある。仮に「相手に受け入れられないかもしれない事」を「リスク」と認識すれば、草食系男子は「リスクを取らない男性」と言えよう。そうだとすると、「リスク」の取り方を理解し実践できるようにすれば草食系男子から脱皮できるはずだ。そこで、諸富教授とは違うアプローチで草食系男子の改善計画を考えてみた。 ステップ1:何をリスクだと感じているのかを知る このステップは企業のリーダーシップのトレーニングなどでも使う事がある。職場環境の中で「なんとなく気になっている事」を複数洗い出し、ある方法に従って分析し、その本質を見極めて対策を打つというものである。このプロセスを通じで改善策の活路を見出したり、自分自身の課題を発見したりする社員は非常に多く、その効果も十分に証明されている。草食系男子にも「リスクの本質」が何なのかを知ることは大変有意義なはずである。ここで言うリスクの本質は、自分が何を恐れているのかを知った上で、どんな結果でも受け入れると決断することだ。結果はどうあれリスクをとって行動した先にのみ未来がある。そこからまた次の行動へとつなげていく事ができれば、もう草食系男子とは言われることはない。6つのステップを踏んでみれば、過去の自分がいかに小さい存在であったかを知る事が出来る。さらに、勇気を出して行動を起こす自分を楽しむ余裕がもてるようになれば完璧だ。
同大学の男子学生の中には、同世代の女性に対して緊張してなかなか上手く話しかけられないといった悩みを持つ学生が以外に多く、同世代の女性に対する簡単なコミュニケーションにさえ悩む男子学生が以前に比べ増加傾向にあるらしい。まさにそれを裏付けるようなな結果がある。諸富教授の話によると同大学キャンパス内の既成カップルを対象に「どちらから告白してつき合うようになったのか?」というアンケート調査を実施したところ、女性から告白したという回答が65%、男性からが35%であった。
このまま男子学生が同世代の女性への「告白」を避け続ける状態が続く事は、将来結婚するための結婚力の低下につながりかねない。このような事もあり、諸富教授が学生達に講義を通じて「婚育」を指導している。実にユニークな試みではあるが少々情けなさを感じる点は否めない。因みに、諸富教授の今年度後期の授業では、「デートコースを考える」「異性にトキメク瞬間は?」などのテーマを取り上げる予定だとか。
自分では自覚していないリスクを認知することから始める。そのために、対人関係において、これは苦手だと思う些細な事柄を10個上げてみる。些細な事を上げることが大切。
ステップ2:グルーピングして要約する
10個上げた苦手な事を並べ、自分の判断で似たものをグルーピングし、グルーピングされた苦手な事象をまとめると、どのように要約されるか100文字以内で表現する。
ステップ3:行動したか、行動していないかに分類する
要約された文章を見て苦手な事に対して、自分が何らかの行動をしているか、それともそれを放置して何もしていないかを分類する。
ステップ4:行動しない未来を考える
放置している状況をこれからも続けた未来を考えて、その先に起きる事を100文字以内で表現する。
ステップ5:改善策を考える
行動しない未来に希望はない事を認識したら、そうならない為に何をなすべきかを考えて50文字以内で表現する。
ステップ6:Just do it !
50文字に書かれた内容を今から実行する。もし、そこで行動を起こせない理由を考え始めたら、もう一度ステップ4に戻る。
学生時代の恋愛の告白ももちろん大切な経験だが、本当にリスクを取らなければならないのは社会にでてからだ。特にビジネスの世界に入ってからは尚更だ。現代企業は性別や国籍に拘ることなくグローバルな場で活躍する「チャレンジングな人材」を必要としている。チャレンジとはリスクをとる行動に他ならない。学生を含む次代の担い手には是非チャレンジングであって欲しい。特に草食系と言われる男性には「リスクをとる草食系になって素晴らしい未来を拓け!」とエールをおくりたい。
アーリーバード