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2010.01.25

企業のポテンシャルが問われる新卒採用

   国内大手企業は10年卒の採用活動を終了し、11年卒を対象にした活動にシフトしている。しかし、文部科学省の調査などを基に就職情報サービスを提供するディスコが出した推計結果によると、「2010年春に大学を卒業する予定の学生のうち、卒業までに企業から内定を取れず就職できない人は、前年比6割増の約13万人に達する」という。これは、卒業見込みのほぼ4人に1人の割合で「就職氷河期」と言われた03~04年卒に迫る水準だ。自動車や電機などの製造業や金融の大手企業が、相次いで新卒採用を大幅に絞り込んだことが大きく影響している。また、楽天・楽天リサーチの実施した、「2011年卒業予定者の新卒採用に関する企業の人事担当者」を対象にしたインターネット調査でも11年卒の新卒採用人数を10年卒に比べ「減らす」予定の企業が21.6%、また、10年卒は採用したが、11年卒の新卒採用は「取りやめる」企業も7.4%あるという。
  
 このような状況下、採用活動を継続する企業、とりわけ普段学生の目に触れにくい中小企業にとっては優秀な人材を獲得する絶好のチャンスである。大手企業が採用枠を削減する中、学生は知名度の低い中小企業にも目を向けざるを得ない状況にある。従って、この不況下にあっても、継続して適切な採用戦略のもと一定の投資を行えば、例年以上に、総じて「優秀」と言われる学生層を、自社の選考対象として母集団に取り込める可能性は高くなるはずだ。

 但し、普段採用し難い、優秀な人材の採用を決断する経営者は、以下二つのことを慎重に確認しておく必要がある。一つは、「自社にとって優秀な人材であるか」、もう一つは、「自社で育成することが可能か」である。この二つは、人材を「定着」させ、自社の基幹社員を自社で育てていくうえでも、重要な観点である。
 
  一つ目の「自社にとって優秀な人材であるか」だが、まずは、自社にとっての「優秀」の定義を、採用担当者である面接官一人ひとりが、共通の認識を持っていることが必要である。採用基準として、各社「素直」「創造力」「責任感」等、それぞれ自社の社員として迎え入れるための、キーワードを必須要件として掲げている。採用面接を実施する企業は、各面接官によって判断基準にブレが生じないよう、これらのキーワードをより具体的な言葉に落とし込んで、事前に目線合わせを行っておくことが重要である。
  また、採用を決断する最終段階で必要なのは、「自社の価値観に適った人材であるかどうかを見極めること」である。自社の価値観にマッチした人材であるほど、「自社の人材」として定着しやすい。入社時に、特別な専門知識や資格を要する場合は多少事情が異なってくる場合もあるが、企業が採用する上で、最も大切な要素の一つが、企業側の価値観との相性であると言える。これから推し進める事業方針にどれだけ本人が納得感を得ているか、また自社の求める成長スピードと本人の意識が一致しているか等を確認しておくことで、企業側の価値観との相性を計ることが出来る。但し、学生の価値観は多様化しており、表面的な言葉からは見抜けない。採用する側は、本人から過去の経験を深堀し、これまでの、あらゆる決断の根拠を確認することで、慎重に自社との相性を見極める必要がある。実際に各企業が今期の新卒採用枠をどれだけ絞り込むかはわからないが、少なくても好景気時代と比較して学生は入口の段階で多少の「妥協」を感じつつ、就職先を決めなければいけない状況は安易に想像がつく。だからこそ、企業は、自社の採用担当者に対し、より一層、学生の本質(本音の価値観)をきちんと見極めるための教育を行っておく必要があるだろう。

  そして、もう一つは、「自社で育成することが可能か」だ。特に、例年以上に優秀な学生を採用した場合、経営者は、日々の仕事において適度な課題を与え続け、本人の能力を飽和させない仕掛けを作っておくことが必要だ。適度な課題を与え続けるための手段として、ほとんどの大企業では、入社後の10年間で2~3の関連事業部を経験させるジョブローテーションを行っている。一般的にも、同じ仕事を長期にわたって継続させることは、非常に効率の悪い育成方法とされているが、中小企業の場合は、ローテーションの出来る部署が限られている。その場合は、単発的なプロジェクトを用意するなどして、別の枠組みで、本人の成長過程に応じた職務を創造し、与えていくことが必要になる。
  また「課題」と同時に、将来のキャリアに「魅力」を与えておかなければ、「自社の人材」としては育ちにくい。例えば、中小企業では、大企業と比較すると、ベテラン社員(もしくは経営層)と一般社員との距離が近いことが多いが、その仕事ぶりを意識的に新卒社員に見せていくことで、自社に所属していることで得られるキャリアのゴールを具体化させることは効果的だ。新卒社員にとって、絵に描いたキャリアパスが存在することは、あまり重要ではない。大切なのは、所属する企業に、魅力ある社員が実在していることだ。そして、その魅力を兼ねた人材になるために、日々ステップアップしているという「成長実感」を与えられる体制を整えることである。より短期的に自らのキャリアパスを捉え、成長出来る環境があるかどうか、その判断スパンが短期化している現代において、「目に見える魅力」と「成長実感」を共に与えられる環境作りが、重要なポイントになっているのだ。
  以上のことは、採用しようとする人材の、「個々のモチベーションをコントロール出来る環境」が、自社にあるか否か、問われているといってもよい。ポテンシャルの高い新卒を採用するためには、それらのポテンシャルを引き出し、活用できる環境が必要になる。経営者は、自社の環境を顧みて、採用した人材に対しての育成基盤がないと判断したのならば、どんなに優秀な人材でも「採用しない」という決断をも行うべきである。

 大手企業が採用枠を絞りこむ中、継続的な採用活動を続ける中小企業には、例年以上に優秀な人材を獲得できるチャンスは確かにあるだろう。しかし、新卒社員の本音を見抜き、新卒を受け入れられる体制が自社になければ、このチャンスも、実を結ぶ可能性は極端に低くなる。例年にない優秀な人材の採用を決定する経営者は、一度自社のリソースと採用する人材レベルとのバランスを、冷静に判断してみて欲しい。そのバランスがとれる企業は、企業として飛躍するポテンシャルも総じて高いのではないだろうか。

 

                                             

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