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2026.11.02

「恋愛力」を磨き上げよう

 恋愛や結婚には、男性なら経済力、女性なら見た目の良さが必要だ。昔からよく聞かれる言葉です。もちろん現代では男女の役割観は大きく変化しており、「男性が稼ぎ、女性が支える」という単純な構図ではありません。しかし、経済力や外見的な魅力が恋愛において有利に働くこと自体は否定できません。
 一方で、近年は「若者の恋愛離れ」がしばしば話題になります。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、18~34歳の未婚者のうち「交際を望まない」と答えた人が男女とも約1/3に達しています。また、交際相手がいない未婚者は男性で約7割、女性で約6割という結果も報告されています。さらに、明治安田総合研究所の調査では、未婚者の76.3%が「現在交際相手がいない」と回答しており、恋愛への関心も低下傾向にあることが示されています。若者の間では「恋愛はコスパが悪い」という考えが広がっているそうですが、何ごともコストパフォーマンスを一つの指標とする風潮として考える思考もそれらを後押ししているようです。

 

恋愛は非効率?
 恋愛は投資対効果が見えづらい活動といえるでしょう。勉強であればいずれは知識が身につきます。筋トレであればいずれは筋力向上につながります。仕事であれば収入やキャリアにつながるでしょう。
 しかし恋愛は違います。時間をかけてメッセージを送り、相手のことを考えデートを企画し、お金を使ったとしても、必ず期待した成果が得られるわけではありません。むしろ、誠意をもって努力しても空振りに終わることの方が多いのかもしれません。空振りに終われば。それまでにかけた時間コスト(連絡、デート、調整にかかる時間)、金銭コスト(デート代、プレゼントなど)、心理コスト(拒絶される不安、すれ違い、気疲れ、うまくいかなかったときの消耗)は無駄になります。このように不確実性が高い以上、「同じ時間を趣味や自己投資に使ったほうが合理的ではないか」と考える若者が増えるのは自然なことかもしれません。

 

恋愛とは連続的な合意形成の結果
 恋愛は多くの場合突然成立するものではありません。まったく知らない二人が、少しずつ関係性を深めていく過程を経て成立します。その過程をよく観察すると、小さな合意形成の積み重ねの結果になっていることがわかります。
 最初は、日常的な範疇の会話からで、お互いに話してみることのハードルが下がれば、継続的な会話につながります。この状態は、会話をしよう、会話してもいい」という合意が成立したことによって始まります。次に会話によって次第に打ち解け「お会いませんか?」という合意に発展し、さらに「近場で食事にでも行きませんか?」、「休日に待ち合わせて出かけませんか?」、「お付き合いしませんか?」という具合に進展していきます。そのうち「二人で近場に旅行に行きませんか」「海外に旅行にいきませんか」というように、徐々に合意のレベルが上がっていきます。恋愛が進展するということは、言い換えれば、お互いの納得感を伴った合意形成の範囲と深さが広がっていくことに他なりません。

 

恋愛が失敗してしまう理由
 では、なぜ恋愛が途中で失敗するのでしょうか。もちろん価値観の相違や相性の問題もあります。しかし、多くの場合は合意形成の失敗として説明できると考えます。
 例えば、
    ・自分の希望ばかり主張する
    ・相手の意思を確認しない
    ・相手の状況や感情を考慮しない
    ・勝手に期待値を上げる
    ・断られているサインを無視する
 こうした行動はすべて、合意形成を阻害します。これはビジネスでも同じです。顧客の要望を聞かずに提案しても合意には至らず契約は成立しません。上司や部下の考えを無視してプロジェクトを進めても組織は動きません。恋愛だけが特別なのではなく、人間関係そのものが合意形成によって成り立っているといえます。

 

恋愛上手な人とは
 恋愛上手な人を観察すると、外見が特別優れている人だけではありません。もちろん魅力的な外見はプラスになりますが、それだけでなく共通している能力があります。それは、「相手が何を考えているのかを理解し、それを踏まえてコミュニケーションできる能力」です。

 例えば、
    ・相手が話しやすいテーマを選ぶ
    ・相手の反応を見ながら話題を変える
    ・自分の要求を押し付けない
    ・相手の不安を先回りして解消する
 こうした行動は相手を知ろう、理解しよういう意識に基づいたコミュニケーションによる情報収集と観察の結果であり、高度な合意形成スキルといえます。営業担当者が顧客から信頼を得るプロセスともよく似ています。顧客との信頼関係を築き上げることが、何より重要なのは言うまでもありません。恋愛においても段階を飛ばした要求は無謀であり失敗しやすいのです。特に主観的な行動につながりやすい恋愛のほうが、その要素は強いと考えるべきでしょう。

 

結婚生活は合意形成の連続
 さらに考えるべきなのは、恋愛のゴールではなく、その先です。仮に恋愛を経て結婚したとしても、合意形成能力が低ければ幸せな結婚生活は続きません。多くのトラブルは合意形成の欠如や未確認から始まっています(合意事項の不履行は大きな火種になります)。お金の使い方、仕事との向き合い方、家事分担、子育て、親との付き合い方、住む場所、人生設計・・・。結婚後には数え切れないほどの意思決定が待っています。そのたびに「自分が正しい」と主張を押し通しているようでは、「まともに会話ができない人」ということになり、早晩パートナーに見放されるでしょう。「どうすればお互いが納得できるか」を考え、時には妥協することも必要です。つまり、恋愛期間とは相手を単に好きになる期間ではなく、お互いの相手は合意形成できる人なのかどうか見極める期間でもあるのです。
 2024年の日本の離婚件数は18万5895件でした。合意形成がうまくできず(または最初は良かったが徐々に合意形成ができなくなった)離婚になってしまったとするのは論の飛躍でしょうか?

 

恋愛力とは合意形成能力である
 恋愛を「コスパ」で考える人は少なくありません。確かに、恋愛は効率だけを見れば不利な活動です。時間もかかりますし、失敗する可能性も高いでしょう。しかし、その過程で身につくものがあります。それは、人の気持ちを理解する力、自分の考えを伝える力、相手と折り合いをつける力、そして、お互いに納得できる着地点を見つける力です。
 これらは恋愛だけでなく、仕事、友人関係、組織運営、家族関係など、人生のあらゆる場面で必要となる能力です。もし恋愛力という言葉を定義するとしたら、それは見た目の良さでも経済力でもなく、「相手との合意形成能力」こそが本質ではないでしょうか。
 恋愛を通じて相手との合意形成を学び、その力を磨いていく。その積み重ねこそが良い恋愛につながり、さらには良い結婚生活につながっていきます。恋愛とは、単なる感情のイベントではなく、人と人とが共に生きるための合意形成力を鍛える最も身近な実践の場なのです。


 

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