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2025.09.01

そうだ、旅に出よう!!

 昨今、スマホの普及によって、あらゆる情報を効率的に取得し、実際に目にしたり体験しなくても、物事を理解した風になった人が増えているように感じる。もちろん便利な側面もあるだろうが、“百聞は一見に如かず”とは真逆のスタンスが当たり前になり、“見て、感じて、偶然を楽しむ”といった現地、現物を大切にする視点が薄れてきているのではいか。そういう意味では、旅は“見て、感じて、偶然を楽しむ”ことができる最適な手段であるように思う。

 

 というのも、最近は国内を中心に旅づいており、今さらではあるが旅の楽しさを実感する機会が多くなった。「人生は旅である」という言葉がある。人生で起こる様々な出来事や出会いを経験し、自己成長をしながら進んでいくことを旅に喩えたものであるが、旅をする中で改めて思うのは、旅は仕事や人生において気づきの宝庫であるということだ。そこで本稿では、旅で得た気づきを仕事にどう活かすかといった視点をまとめてみた。仕事で疲れているときこそ、旅に出てみようと少しでも思ってもらえれば幸いである。

 ※    旅の定義は様々あるが、本稿では日常生活とは別の場所を訪れることとする

 

 

気づき①:旅のような非日常感をデザインする

 住み慣れた場所を離れて、現地の人やモノに触れると、普段とは異なる感覚が生まれるものだ。その感覚を持って普段の自分を振り返ると、いかに自分が小さくまとまっているかを痛感することがある。先日も大阪・関西万博の旅に出て以下のような体験をした。

 

 万博といえば大屋根リングが象徴的だが、実物は予想以上に巨大で美しさを感じられる圧巻な建築物であった。あの大屋根リングは、世の中を円と見立てており、誰もがどこからでも自由に出入りできるというコンセプトを体現している。また、リング内では、各国が資金を出してパビリオンの建物を目立たせるといった競争性を排除しており、全ての建築物は高さ20m以内にするように義務付けられている。等身大のガンダムがひざまずいている理由には、公平な世界を表現するために、高さを守っていたのだと後に知った。

                                                                                                                                 

 コンセプチュアルな世界観を日本のトップランナー達が表現しようとしていたことを想像すると、その視点を持ち切れていない自分への自己嫌悪感と、よし何かやってやろうと動機付けされる感覚が芽生えている自分に気がついた。このように、旅での非日常感を味わいながら、圧倒的なものに触れることは自身のマインド変革のきっかけにつながる。

 

 このマインド変革の本質は越境学習であると考える。越境学習とは、所属する会社や部署の枠を超え、まったく異なる環境に身を置くことで新たな視点、知識、経験を得る学習方法のことである。人が異質なものに触れることで、元々有する既存視点と新たな視点を融合させて成長していくように、非日常感を味わいながら成長のきっかけを作る旅は、うってつけの越境学習ツールなのだ。

 

 では、仕事に活かすにはどうすればよいか。それは、普段の仕事に非日常感を組み込むことだ。例えば、外部の専門家と実際に会ってその凄さを体感する、他社で活躍する人材と社会課題について話してみるなど、自社から離れて行動することによって、新たな気づきを得やすい状態をつくるのだ。加えて、“このままの自分ではだめだ”という健全な危機意識の醸成にもつながる。

 

 クライアントと接していると、我が社は外部視点がなく内向きであるといった話しを耳にするが、そういった視点を養うために、日常の業務から離れて、非日常的なものに触れる機会をデザインし、社員の主体的な越境学習を促す土壌を整えてみてはどうだろうか。

 

気づき②:計画的偶発性を積極的に起こす

 先日、地方旅行の際に一人の時間ができたため、とある焼き鳥屋を予約した。カウンターで一人舌鼓を打っていたのだが、隣に男性の一人客が座ってきた。どうも見覚えがあると思い、帰り際に声をかけてみたところ、以前仕事で関わっていたクライアントであった。話を聞くと、旅の途中で美味しい焼き鳥を食べるために偶然同じ店に立ち寄ったそうだ。お互い焼き鳥好きということもあり、その後東京でも二人で何度も食べにいく関係になった。

 

 まさに、偶然が重なった出来事であるが、旅では日常生活よりも偶然が起こりやすいように思う。では、どのようにすれば、偶然を引き寄せることができるのだろうか。それは、興味があることにフラグを立てて自分をタグ付けし、発信しつづけることと、運、縁、出会いといった理屈では説明できないことを楽しむ姿勢がポイントであると考える。今回の事例であれば、焼き鳥好きという話題を常に発信できるようにしていたことや、セレンディピティ*¹が起こるかもしれないといった心の準備ができていたからこそ、焼き鳥談義に花を咲かせて、新たな人間関係の構築につなげることができたのであろう。

 

 このような偶発的な事例は仕事でもしばしば起きる。むしろ、計画的偶発性を活かすことで、仕事の活性化につなげることができる。計画的偶発性とは、偶然の出来事を積極的に活かして、可能性を切り開くといったキャリア理論の考え方である。大抵の仕事は、目標をクリアするプロセスが計画通りにいくことは少ないはずだ。要は、計画はするが、運、縁、出会いなど偶然起きる出来事を活かしながら、柔軟に計画を修正し、結果的に目標をクリアしていくというわけだ。曖昧不確実性の高い環境下では、計画通りのガチガチな行動をするよりも、様々な偶発性を活かした柔軟な行動の方が適している。

 

 仕事において、自身の問題意識や考えていることを外に発信し、何らかの縁を大切にする姿勢を持って行動し続けていると、思いがけない出会いから、新たな仕事や人脈づくりにつながることがある。計画的偶発性を意図的に引き寄せることは可能なのだ。

 

 

 ここまでは、旅で得た気づきを仕事にどう活かすかといった視点を2つご紹介してきたが、少し話題を変えてみたい。昨今、数値や効率至上主義的な資本主義の限界が指摘され、社会システムのアップデートの必要性が声高に叫ばれている。御大層なことを論じる気はさらさらないが、システムのアップデートに向けて、社会の一員である大河の一滴として、仕事における自身の思考と行動を変えることはできるのではないか。

 

 あくまでも私見だが、数値や効率性ばかりを追求するのではなく、数値では表せない目に見えないものに目を向けることや、一見無駄に見える非効率なことに取り組むことなどは、変革を促す端緒になるのではないか。数値ばかりを追い求めれば、他人を蹴落としても勝つといった競争意識が強まるし、効率ばかりを追求すれば必要のないものを切り捨てればよいという論理がまかり通ってしまう。

 

 一方旅には、珍道中などといった非効率な面がある。学生の頃、電車であれば4時間で行くところを自転車で3日間かけて旅をしたことを思い出す。行く先で出会う人たちに泊まる場所や食べるものを手配していただいたおかげで、最終的に目的地に着くことができた。非効率な環境の中で人のやさしさに触れて、自分も誰かにそのやさしさのバトンを渡したいたいと思ったことは、今も大切にしている原体験の1つである。このように、旅に出ることは、越境学習や計画的偶発性を起こし、新たな視点を楽しみながら得ることができるのである。少々飛躍するが、旅にはミエナイチカラで昨今の厭世的なムードを払拭するパワーがあるのかもしれない。(そうあってほしい)

 

 ある人は「アイデアは距離に比例する」といっている。また、ある人は「社会人の教養は人、本、旅」だといっている。昔から人は、旅に出ることでアイデア創出や自己成長につなげているのだ。因みに、脳科学では、旅によって集中力を高めて悩みを緩和することができるという。非日常的な体験を通じて、脳に普段とは別の刺激を与えることで、脳が活性化し“今ここ”に集中しやすくなるのだそうだ。

 

 企業においても、ワーケーションを推奨する事例が出てきている。日常業務に旅のような非日常性を組み込んで、新たな気づきや思いもよらぬ出会いが起こりやすい状況をつくり、社員のフロー状態*²や仕事の活性化につなげる狙いがあるのだろう。

 

 旅のパワーを仕事に活かす可能性は無限大である。仕事が忙しく余裕のないビジネスパーソンこそ、積極的に旅に出てみてはいかがだろうか。きっとあなたの中の“何か”に反応し、あなたの仕事におけるクリエイティビティを発揮する原動力となるはずだ。

 

U2

 

*1:素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること

*2:特定の活動に深く没頭し、時間感覚を忘れ、高い満足感や充実感を得られる心理状態のこと

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