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2018.12.18

「従業員総副業時代」に乗り遅れないために

2018年は「副業解禁元年」と呼ばれている。背景としては、厚生労働省が2018年1月に「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日 働き方改革実現会議決定) を踏まえ、「モデル就業規則」から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業・兼業を禁ずる規定を削除したことが挙げられる。

では、実際に副業・兼業の許可を行っている企業はどれほどあるのかを見てみよう。全国の従業員100人以上の企業12,000社を対象とした労働政策研究・研修機構の「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」(2018年)によれば、「副業・兼業を許可している」企業の割合は11.2%、「副業・兼業の許可を検討している」割合は8.4%となっており、副業・兼業に前向きな企業は全体の2割ということになる。一方で、「副業・兼業を許可する予定はない」企業の割合は75.8%となっており、企業側は副業・兼業に対してまだ慎重なようだ。

一方で、労働者側はどうだろうか。同調査によると、今後5年先を見据え、副業・兼業を「新しく始めたい」割合は23.2%、「機会・時間を増やしたい」割合は13.8%となっており、約4割の労働者は副業・兼業に前向きであることがわかった。労働者が副業・兼業を望む理由としては、収入を増やしたい、活躍できる場を広げたい、人脈を構築したい、組織外の知識や技術を取り込みたいといった声が多い。

労働者が副業・兼業を求める主な理由としてあげている「収入を増やしたい」という理由は、終身雇用の崩壊やAIやロボットによる単純作業の置き換え等による雇用機会の消失などの将来への不安が影響しているのではないかと推察する。また副業を通じて、知識、経験、人脈を求める声も比較的多い。その理由としては、上記のような不安を払拭するための自身の成長への想いが、昨今の労働者の意識の根底にあることを表しているのではないだろうか。

こうした背景がある中で、働く側から見たときに、副業・兼業を認めない会社は魅力的に映るだろうか。答えはNOだ。NPO法人二枚目の名刺が国内の大企業(従業員1,000名以上)に勤務する正社員1,236名に対し、副業に対する企業の意識や実態についてインターネット調査をおこなった結果によると、労働者の6~7割は、副業を認めない経営者・会社に対しては「魅力を感じない、あるいは働き続けたくない」という結果が出ている。こうした結果から、今後企業にとって、副業・兼業を認めないという選択は、自社の人材流出に繋がる恐れがある。

こうして考えると、副業・兼業を認める方が、企業にも従業員にもメリットがあると考えられるが、なぜ実態は進んでいないのか。その理由の一つとしては、企業が考える副業・兼業に対するリスクにあると推察される。

リクルートキャリアの「兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)」の結果によると、企業が副業・兼業を禁止する理由として「社員の長時間労働・過重労働を助長するため」、「労働時間の管理・把握が困難なため」、「情報漏えいのリスクがあるため」、「競業となるリスクがあるため、利益相反につながるため」等のリスクが挙げられている

今後こうしたリスクを排除し、副業・兼業を奨励する環境を整えることが、企業側に求められることは明白である。では、どのような観点でそうした環境を整備していけばいいのだろうか。私は以下の3つの点に着手することが必要だと考えている。

まず、本業での労働時間の見直しである。企業が副業・兼業を許可しない理由の一つとして多いのが、本業の労働時間と副業の労働時間が相まって結果的に長時間労働を招く可能性を懸念していることだ。労働基準法第38条において、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定められているため、企業は本業と副業の勤務先の労働時間を通算して扱う必要がある。そもそも本業の労働時間が長時間に及ぶ場合は、副業・兼業自体が難しい。こうした理由から、まずは本業の労働時間を見直し、適切に現状を把握すること。無駄があれば削減し、時間を捻出すること。その上で、副業・兼業の検討を開始する必要がある。

次に、企業が社員と将来的なキャリアゴールを共有する接点を持つことだ。上昇志向のある社員であるほど、自身のキャリアにおいて求められるスキルの向上を自主的に図る傾向にある。しかし、そのスキルが会社で担う役割において求められるスキルと異なる場合、自身のスキルが発揮できる会社に転職する可能性は否めない。企業は、上司を通じて社員本人のキャリアゴールを共有することで、彼彼女が求めるキャリアに対して本業で積むことのできる経験と積むことのできない経験を明らかにし、本業で積むことのできない経験については、積極的に副業・兼業を通じて経験させることで、結果として高いスキルを持つ社員の育成・定着の実現に繋がるはずだ。

最後に、企業のトップが優秀な人財が自社のみならず、他社(他業界)で活躍することを喜ばしいことと認識することが必要だ。トップがそうした認識から、副業・兼業を奨励するメッセージを送ることで、従業員が副業・兼業の実施に向けて動き出す。自社の代表として、様々な場所で活躍する人財を一同に抱える企業こそがダイバーシティを実現しているとも言える。

 

人手不足がますます深刻化を増している現代において、今後副業・兼業を進める企業が増える流れは加速し「従業員総副業時代」が来るといっても過言ではない。この加速する時代の波に乗り遅れないためには、企業が副業・兼業をポジティブに捉え、社員に奨励していくくらいがよいのではないだろうか。そうした企業に勤める従業員が、本業だけでなく副業・兼業を通じてキャリアゴールに向けて加速度的にスキルアップすることで、働き方改革が意図した労働生産性の向上にも寄与するはずだ。

①      「働き方改革実行計画」(2017)         :https://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/05.pdf

②             「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」(2018):https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/184.html

③             「大企業勤務者の副業に関する意識調査結果報告書」(2017)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000024608.html

④             「兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)」https://www.recruitcareer.co.jp/news/20181012_03.pdf

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