2017.08.19
国会議員能力検定導入のススメ
31,051人、何の数字だかわかるでしょうか?日本国内の国会議員、地方議員(都議、市議)、さらに区議、村議を含めたもので、議員と呼ばれる人々の総数です(知事、市区長などは含んでいません)。現在、これだけの数の議員と呼ばれる人たちが、国民や市民の代表として、政治に携わっています。
平成29年8月3日に第3次安倍改造内閣が発足しましたが、これまでの面子を大きく変えてきました。閣僚には大臣や長官経験も豊富で、東大卒やハーバード卒などの高学歴がずらっと並び、これまでのお友達人事とは一線を画す内閣を組成しました。これによって、首相自らの疑惑や各議員の不祥事によって失った支持率を取り戻し、党内の求心力を高めようという狙いですが、これから新閣僚に対するマスコミによる”調査”が始まり、過去の素行上の問題や、失言の数々が明らかにされることになります。もちろん身辺に問題がなければ、恐れることはありませんが、過去の事例を紐解くと必ず何がしかのトラブルが起こります。これは閣僚に限らず、他の議員も同じで、毎年何人もの議員が離党や議員辞職に追い込まれています。
今年に入ってからも国会議員の不祥事?は後をたたず、数えただけでも相当数に上ります。
●稲田朋美前防衛相は、特定候補者の応援演説で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と発言しました。また陸自の日報問題での隠ぺい疑惑を拭うことができず、結局内閣改造を前に辞任にするしかない状況に追い込まれました。
●今村復興担当大臣は、自民党二階派のパーティーにて「(東日本大震災が)まだ東北で、あっちの方だったから良かった。首都圏に近かったりすると、莫大な、甚大な額になった」と発言して大騒ぎになりました。今村氏はこれまでにも「(自主避難者は)自己責任」などの失言を繰り返してきており、この発言を機に辞任ということになりました。
●豊田議員の元秘書への暴言暴行というのも記憶に新しいです。その録音テープが連日テレビで流され、小学校では同じように怒鳴る遊びが瞬く間に定着したようで、流石にマスコミも配慮して、暴言テープを放送するのは控えたようですが、その内容はそれほどに凄まじいものでした。同議員は一度もマスコミ前に出てくることはなく、入院ということで雲隠れし、自民党に離党届を出したという状態です。自体が沈静化するのを待っているのかもしれませんが、次の衆院選に出馬するのは難しいでしょう
●務台復興政務官は、政治資金パーティーで「たぶん長靴業界は、だいぶ儲かったんじゃないか」と発言しました。被災地での状況を揶揄していると非難を浴び謝罪しました。務台氏は、16年9月にも台風の被災地を視察した際、長靴を持参しなかったため、水たまりを職員におんぶされて渡った様子が報じられたこともあり、その言動はどこかズレています
●安倍首相にも、森友、家計と二つの口利き疑惑が取りざたされ、都議選を前に内閣支持率を急降下させてしまい、都民ファーストの会の躍進の前に、大惨敗してしまいました。
●昨年は、舛添東京都知事が不透明な政治資金の使い方、公費の私的流用などで、辞職に追い込まれました。かつては厚生労働大臣を務め、首相にしたい人NO1に選ばれていた程人気もありました。それが都知事就任後に次々に不正とおぼしき事象が暴かれ、その弁明として「東京都のトップがみっともないホテルには泊まれない・・・」「公用車は走る執務室・・・」など、独自の理論で自体の沈静化を図ろうとしましたが、すべてが都民のカンに触ったようで、辞任せざるを得なくなりました。東大で国際政治の教鞭をとっていたほどの論客ですから、議員としての知識はトップレベルだったのでしょうが、都民の感覚からずれてしまったモラル面では、まったくの落第だったのでしょう。
国会議員は、発言の機会も多く、マスコミにさらされることも多いので、多くの失言やスキャンダルがクローズアップされます。一方で、県議や市議は国会議員ほど目立たないだけで、やっていることや考えていることが似たようなものではないかと勘ぐりたくなります。
サミュエル・スマイルズの名著「自助論」の中に、「政治は国民を映す鏡」であると指摘したくだりがあります。政治が国民のレベルより進みすぎている場合には、必ずや国民のレベルまでひきずり下ろされ、反対に政治のほうが国民より遅れているなら、政治のレベルは徐々に上がっていきます。これは水が低きに流れるようなごく自然のなりゆきで、「立派な国民には立派な政治、無知で腐敗した国民には腐りはてた政治しかありえない」ということを示唆しています。良い政治家を育てられるかどうかは、私たち国民次第ということになりますが、政治家がどれだけ優秀なのか、どれだけ国民(市民)に対して有益な仕事をしたのかが、極めてわかりにくく、それゆえに地元に利益を誘導した政治家が優秀、また歯に衣着せぬスピーチを駆使して、国民の感情に迎合するようなパフォーマンスがもてはやされ、その行き過ぎた結果が”失言”となって現れます。また比例代表制では直接議員を選ばないので、政党が決める名簿順位が能力で決められていなければ、有権者は優秀ではない議員の選出をアシストしたことにもなってしまいます。このようなプロセスの中で、国民のレベルが低いから政治のレベルが低いと言われても、いかに名著の一説であっても反論したくもなります。
ここでの問題は、政治家として選ばれた人たちが、国や自治体をより良い方向に導くための専門的知識を有し、国民の代表としてのモラルや品格を備えた存在であり、私利私欲を捨てて国民のためのしっかりと仕事をしていこうという強い意志を持っているかどうかが有権者にはわからないことにあります。そこで、議員検定テストを導入して、その結果スコアを随時公表することを行ってみるというのはいかがでしょうか?考えてみれば、国会議員ほどの重要な職種が無資格でというのもおかしな話です。
検定項目は以下のように考えてみました。個人の政治的イデオロギーや政治的ポリシーを問うものではなく(例えば憲法9条の解釈の云々をスコアリングするものではない)日本国民の代議員としての基本的な知識を有しているかだけを問うていくものです。
①憲法、法律の知識
ここ1~2年以内に取り上げられた立法に絡む要素から出題し、ホットになっている憲法や法律的知識を収集しているかを確認
②議員の役割や国民に対する立ち位置
議員は国民の代表であって、国民の上のたつものではないということをわきまえているかを確認
③国際的機関や主要会議体
その設立経緯と主要な役割などを理解しているかを確認(国連、IMF、UNESCO、WHO、ダボス会議など)
④国際問題
地球温暖化、経済、戦争、人口、食糧などなど、そのときの主要なトピックになっている事象の情報収集を行っているかを確認
⑤公費の使い道、範囲
一般常識としての使い方を知っているかを確認
⑥やってはいけないこと
過去の事例(ロッキード事件、リクルート事件、佐川急便・・・)から出題し、どこまでが合法でどこまでが違法かを認識できているかを確認
⑦過去の失言事例から
過去の議員の失言に対して、何がどのようにダメなのかを理解しているかを確認
これらの知識を判定するための問題作成を大手予備校に依頼し、通常国会閉会後に国会議事堂本会議場で全国一斉テストを行って即日集計、発表という段取りです。もちろん全議員が対象なので、各々の地方でも同時に実施されます(大手予備校であれば、全国一斉模試開催の実績も豊富なので、3万人規模ならば簡単に実施できるでしょう)
この結果によって、失礼ながら高齢により最新の情報や政治状況についていけない議員、全く勉強していない議員や、自分の立ち位置を特権階級のように考えている議員などを炙りだすことができます。またスコアによっては、議員特権利用の限定適用や重要閣僚登用の足切り基準にするなどの活用方法も考えられます。そして最大のポイントは、スコアを開示することにより、議員の考えや能力を客観的に評価できる目を有権者に提供することにあります。
支持する議員のスコアをみて、それが基準に満たない低いレベルだったとして、それでもその議員が再選されてくるようであれば、サミュエル・スマイルズの慧眼に敬意を表すると共に、民意のあまりの低さに改めて嘆きたいと思います。
マンデー