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2012.01.13

日本の未来に暗雲をもたらす人口減少を食い止める方法とは

 2011年の大みそかに末に発表された平成23年の人口動態統計の年間推計は衝撃的でした。出生数が105万7千人となり、昭和22年の統計開始以来最少となりました。一方、死亡数は126万1千人と過去最多に拡大し、差し引き20万4千人の人口減少となりました。戦後初めて人口減となったのが2010年の12万5千人を大幅に上回り減少幅に加速がついてきたことになります。ちなみに20万人といえば、東京都文京区と同じ規模の人口数となり、毎年同区相当分以上の人が減少していくということになります。厚生労働省では今後も毎年、人口減少の拡大が続くと予測しており、本格的な人口減少社会が到来したことになります。

 昨年末から内閣では社会保障と税の一体改革とした消費税の税率アップと所得税の最高税率の検討を始めています。社会保障費の財源を増税によって賄おうという考えですが、短期的な財源の確保だけでなく、将来の納税者や年金負担者を増やすことを並行して行わなければ、増税したとしても社会保障費の増加に税収が追いつかなくなることは明白です。今の社会保障(特に年金)システムは緩やかな人口増加とインフレ、経済成長(GDPの増加)を前提として設計されています。人口減少は経済成長にも悪影響を与えますので、その前提条件が狂えば、システム自体の崩壊にもつながってくる一大事です。  人口減少の怖しいところは、何らかの施策によって出生数が増加しはじめたとしても、その効果がGDPや税収増にとして現れてくるまでは20年以上の時間がかかることです。新生児が成人になって就業し納税するまでは、日本の国力は弱まるばかりなのです。  現在の日本国民は、文化的生活、物質的な繁栄を放棄して戦前の不便な生活に戻ることは容易に受け入れないでしょう。現在の豊かさを維持していくためには国の持続的成長が必須であり、そのためには人口減少への歯止めをかけ、最低でも1億2千万の人口を維持することが必要となります。

人口減少の原因は、高齢化社会を迎えての死亡数の上昇もありますが、根本は出生数の減少です。その先行指標として結婚数の減少と晩婚化があげられます。また婚姻カップルの子どもに対する意識変化も大きな要因です。高度成長期には「産めよ増やせよ」ということで、結婚後は子どもを2人程度はもうけるのが当たり前でしたが、昨今は意識的に子どもをもうけなかったり、一人っ子で十分というような考え方が大多数を占めるようになりました。  人口を増やすには移民を受け入れるか、少子化の原因といえる晩婚化と非婚化の抑制、そして夫婦間の「子どもをもうける」ことに対する意識を変えていくしかありません。  ここでは夫婦に対象に子どもを産みたいと思えるような施策について言及したいと思います。

 現代は、子どもを産み育てるという点において、恵まれた環境が整備されているわけではありません。結婚しているが子をもうけない世帯の理由の一つに、出産とその後の産休によって妻の収入がなくなることで、これまでの生活レベルを維持することが難しく、生活レベルを落とすくらいなら子どもがいない生活を選択する、という考え方です。厳密には育児休業給付金として就業中の給与の50%が補助される仕組みがありますが、補助期間が1年程度であることなどで収入面での不安を払拭するには至っていないのが実情でしょう。  また出産医療費(自治体から補助が出ると言っても)もバカになりません。そして産休後にこれまでの企業に復帰したとしても、産休前と同じ業務、同程度の給与が保証されることは難しく、そのことが女性が子を産むということを躊躇させる理由の一つになっています。現在は子どもを産み育てるということは、子どものいる楽しい生活と引き換えに、遊興費を我慢した生活をおくるという事実があります。DINKSを楽しむ世帯は、遊興費に回せるお金も多いわけですから、それを羨ましいと思う子育て世帯も少なからずあると思います。

 また社会復帰を考える女性にとっては、待機児童問題が大きな影を落とします。保育所に預けたくても空きがなく待っている児童が数十人もいるような地域もあります。また運良く空きが出たとしても、保育所の費用は数万円から多いところでは10万円近くになる施設もあります。これでは社会復帰した女性の収入のほとんどが保育所の費用に消えてしまうような笑えない事態も発生しています。

 このような社会的な不具合をできる限り是正して、女性が働きやすく子どもを育てやすい社会づくりを行うことが、少子化に歯止めをかける一つの方法といえます。民主党の子ども手当の基本概念は、子どもは社会全体で育てるというものでした。その考えをさらに推し進めて、子どものいる家庭は社会的に優遇されるという環境を作り出してみてはどうでしょうか。その方法として、以下の3点を提示します。

① 育児休暇後の職業と給与を保証する

 女性社員が出産によって産休に入りますが、育児休暇を明けて復帰する際は元の職場に戻れること、それまでと同等レベルの給与を保証することです。もちろん本人の希望次第となりますが、場合によってはそれまでの業務と同等レベルの仕事に復帰できるような仕組みも重要です。これによって女性は戻れる職場と仕事、そして賃金が確保できるので、出産によって今の仕事がなくなってしまうという理由で出産を躊躇する女性のニーズに応えることができます。  業務内容や業務可能時間などの問題で、出産前と同じ業務や役職に就けるかどうかは、職務によってマチマチでしょうが、少なくとも法律で出産後の戻る場所を保証し、安心して出産できるような環境を整備することがポイントです。

② 結婚とその後の子どもの数に応じた所得税減免措置を講じる

 結婚し子どもを産み育てることが、社会に貢献することとして、様々な優遇措置を適用する仕組みです。 まずは結婚することで結婚後の2年間程度、所得税額を20%減免します。その後減免期間の2年間に子どもが生まれた場合は、減期間を子どもが成人するまでの20年間に延長し減免幅を所得税額の40%に、さらにもう一人生まれた場合は、減免率を上乗せて60%に、3人目が生れた場合は80%、4人目からは100%免除とするなど、結婚することとより多く子どもを産むことが社的に優遇されるような仕組みにします。また、その他の優遇措置として、子どものいる世帯には住宅ローン減税の対象期間を長くしたり、自動車の取得税や重量税を減額したりと、様々な方法も考えられます。ここでのポイントは国家をあげて、子どもを育てる世帯をバックアップしていくという、「本気度」が重要なのです。合わせて結婚しない人、結婚しても子どもをもうけない世帯は、所得税額を増額するなどの措置も必要になります。(もちろん健康上の理由などで子どもを産むことが厳しい方の免責措置も整備する必要もあります)。  これによって、子どもを育てる世帯を社会でバックアップし、結婚しない人や結婚しても子どもをもうけない人がその税を負担するという仕組みができあがります。

③ 待機児童対策を講じる

 働きたい女性にとって、子ども保育園に預けられない「待機児童」対策は重要です。今も人口流入が続く新興住宅街などは深刻な問題になっています。そもそも保育所の数が圧倒的に少ないことが要因ですが、現在の高齢化社会では自宅で暇を持て余している先輩ママも大勢いると思います。これら高齢者を上手に活用して保育所数を大幅に増やす方法です。これは橋下大阪市長の提言である「保育ママ」制度をそのまま使わせていただきます。自宅で子供を預かることを希望する女性について、市の研修を受けたうえで全員が事前に登録。役所が、子供を預けたい母親と保育ママの間を仲介する制度を新設する。子供を1人預かれば月額8万円程度の報酬がもらえるため、子育てを終えた女性などの新たな雇用の場にもなります。近隣の自宅が保育所になるので、待機児童対策に大きな効果が見込まれます。  また保育所費用の補助も必要です。保育所の費用で社会復帰した女性の給与のほとんどが消えていくようでは、保育所の整備が行きとどいているとは言えません。すくなくとも現在の半額になるような補助を行っていくべきです。

 これらの提言に対しては、財源の問題をどうするかという意見が出てくることでしょう。現在の子ども手当、高校無料化などの施策をすべて廃止して、所得税の減免によって減った税収を穴埋めに使います。希望的観測ですが、子育てにはお金がかかります。所得税減免によって各世帯に増えた収入が子育て用の消費に回れば、消費税収が増えることも期待できます。それでも足りない場合は、余分な歳出をカット(人口が減少した場合は不用になるような公共事業)してでも対策を講じるべきです。  また抵抗勢力の存在も無視できません。最も大きな勢力として考えられるのは野党、そして財務省と文部科学省です。野党の反発の争点は本当に少子化が緩和され、人口増に寄与するのかということです。こればかりは実施してみないことにはわかりませんが、綿密なシミュレーションを行って所得税の減免による可処分所得の増分などを算出して、それが出産しようというモチベーションにつながるかどうかを仔細に検討する必要はあります。しかし現在の無策(もしくは場当たり的)といってもいい少子化対策ではなく、少子化の解決を目的として集中的に予算と役人を投入すべき重大問題だという認識のもと、政局の道具にすべきではないことをわかってもらうことでしょう。  また財務省は所得税の減税には決して首を縦にはふらないでしょうし、文部科学省は「保育ママ」の緩和に対して自らが管轄する幼稚園の存在を侵食するとして、安全性などを盾に反発してくるでしょう。  所得税の減税に対しては消費税、法人税、相続税の増税をセットにすることで、財務省は目を瞑るかもしれません。消費税、法人税の増税は財界の反発が予想できますが、今のまま手をこまねいても国内消費者は減少していくだけです。20年後の消費者層を増やしていく政策として長い目でみて我慢してもらうことになります。文部科学省にとっても、将来の学生を増やすことになり、現在の反発の前に近未来の小学校の整備に知恵を使うべきです。

 今、多くの先進国は少子化による人口減少に悩み、それぞれの国が自国の文化や宗教感に基づき趣向を凝らして出生数の増加施策を講じています。日本も目先の対策に追われることなく、20年先を見た少子化対策を講じてほしいものです。これからの出生数が2011年を上回るよう、祈りたい2012年初頭です。

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