PMI Consulting Co.,ltd.
scroll down ▼

2010.07.07

Good morning! 今日から社内公用語は英語です!

 2010年6月、ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリング(以下、ファーストリテイリング)が2012年3月から、楽天市場などを展開する楽天株式会社(以下、楽天)が2012年中に、社内の公用語を英語とすることを発表した。これまでの日本企業では、日産自動車株式会社がカルロス・ゴーン氏を社長に迎え入れてから経営会議などを英語で行うなど、限定的な場面で英語の使用を義務付ける企業はあった。また、管理職への昇格条件に「TOEIC***点以上」を条件とするなど、英語力に関する一定の基準を設けるケースは多くの企業で見られた。しかし、全面的に社内で使用する言語を英語とした企業は、日本の大手企業の中では、まだ他に例はない。
 社内公用語を英語とした理由について、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は「日本の会社が世界企業として生き残るため」、楽天の三木谷浩史社長は「世界企業に脱皮するには英語が必要と判断した」と説明している。つまり、2社ともに世界を相手に戦っていく為には、社内公用語の英語化は、必要不可欠なものと判断したのだ。
 世界を相手にビジネスを展開していく上で、社内公用語を英語にすることで得られるメリットは、大きく2つある。一つは、世界の多くの企業と円滑なコミュニケーションが取れるようになり、顧客や協力企業と交渉や海外現地法人でのマネジメントなどを行いやすくなる事。もう一つが、社内公用語を英語とすることで、海外から優秀な人材を集めやすくなることである。これは、社内公用語が英語であれば優秀な人材が集まる、というよりも、社内公用語が日本語のままでは、海外の優秀な人材を集めることは難しい、といった方が正確だ。楽天の三木谷社長も、この2点のメリットについて、「世界で事業を成功させるには、スタッフレベルの英語のコミュニケーションが重要になってくる。海外の優秀な人材を得るためにも必要」と、重要性を認める発言をしている。
 
 それでは、英語を社内公用語として定着させる為には、何が必要だろうか。
 非英語圏の国で、英語を社内公用語として定着させている企業に、韓国のサムスングループ(以下、サムスン)を例にとって見てみよう。サムスン内で英語が社内公用語として定着していった背景には、1997年のアジア通貨危機と、金大中政権による財閥解体政策の影響で、経営が窮地に追い込まれたことがある。
 この危機的状況を打開するために、李健煕会長は海外の先進技術や洗練されたデザインなどを取り込んで付加価値向上を追求することとした。そして、開発された製品を積極的に海外市場へと展開することで、着々と売上を伸ばしていった。こうした海外の先進技術やデザインを取り込む為に、サムスンでは日本を初めとする海外の技術者やデザイナーを積極的に招聘し、海外展開に当たっては積極的に社員を現地に送り込み、徹底した調査分析を行い、十分なマーケティング戦略を練り上げていった。
 その過程において、海外の技術者やエンジニアとの共同開発や、海外の現地企業や消費者たちを調査分析する為には、母国語のハングル語では当然難しく、英語を彼らとの共通言語とするのは自然であり、必然的な流れであったと言ってよい。そして、その必然性が、当たり前のこととして社内に定着した大きな要因の一つは、李会長自らが全社員に対して、これからの戦略と英語力の必要性を強烈にメッセージしたことにある。なお、これより以前から、李健煕会長は、海外市場に攻めて出る上で、ターゲットとなる国を良く知る人材が必要と考え、一部の優秀な社員を海外に1年間派遣し、その国の文化などを自由に研究させる「地域専門家制度」を導入している。こうした海外進出に備えた人材育成に積極的に取り組んでいたことも、李健煕会長のメッセージを強烈にすることに寄与している。
 サムスンの事例から、英語を社内公用語として定着させる為のポイントを上げるとすれば、今の自分達は海外に学び、海外に打って出なければ、企業として生き残ることができない。そして、世界の中でサムスンが生き残る為には、社員は英語を当たり前の道具として使えなくてはならない、という強烈なマインドセットを全社員に行った点である。また、採用時にも「TOEIC730点以上」を条件とするなど、これからサムスンを目指す人材に対しても、サムスンでは英語力が必要となることを明確に打ち出している。

 つまり、英語の社内公用語化を推進する為には、これからビジネスをしていく為には、英語が不可欠であるという必要性と、もう英語からは逃れることができないという強迫観念に近いような危機感を醸成する必要がある。しかし、長い間日本国内の市場で戦ってきた日本企業のビジネスマンや、市場や製造拠点を海外に持ちながら現地に行くのは限られたマネジメント層だけということが多い日本企業のビジネスマンは、英語の必要性は認めながらも、危機感はまだまだ低い。このような危機感は、海外勤務者は英語が必要、一部の会議だけは英語とする、といった限定的、段階的な英語化では醸成するのは難しく、全社で一斉に英語を公用語に切り替えなければ醸成できない。
 従って、社内公用語の英語化は、英語が浸透してから実施するのではなく、最初に英語化を宣言し、社員が英語から逃れる道を断ち切ることをしなければ実現は難しい。その点から、ファーストリテイリングや楽天のアプローチは、従来の日本企業には青天の霹靂かもしれないが、今後は多くの日本企業が学ぶべきロールモデル(お手本)となるだろう。いずれにしても、ファーストリテイリングと楽天が英語を社内公用語として定着させる為には、柳井会長兼社長、三木谷社長が感じている危機感や描いている戦略を、全社員とどこまで共有し、一丸となって危機的状況の打開、戦略の実現に向かう組織風土を醸成できるかが重要になってくる。二人とも、今さら言うまでもなく、日本を代表とする経営者であり、実績・実力は疑う余地はない。それぞれの企業を世界企業へと導く為に、お二人には益々のご活躍、リーダーシップの発揮を期待したい。
 
 日本のビジネスマンたちよ、日本という小さな島国の言葉だけではビジネスができなくなり、英語でビジネスができる事が企業で働くための必要条件となる日はそう遠くない。会社から言われる前に、自ら退路を遮断して今日から準備に取り掛かろう!

ヘッジホッグ

Recruit

採用情報

お客様と共に成長し続ける新しい仲間を求めています

Contact

お問い合わせ