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2009.12.21

部下の思考力を高めるために「情報の限界」をマネジメントする

昔、ある上司に「情報の限界が思考の限界であり、思考の限界が行動の限界であり、行動の限界が成果の限界となる」と教えられた。これは何かしら成果を出して行くプロセスであれば広く当てはまる原理原則であるが、以下ではこの原則を用いて部下のマネジメントについて考えてみたい。

成果を高めるために管理者が部下の「成果」「行動」「思考」「情報」にアプローチすることがマネジメントといえる。1990年代~2000年初め頃は成果主義という名の管理志向のマネジメントが重視されるようになり、マネジメントの焦点は「成果」-「行動」に比重が置かれ、結果管理や行動管理が管理者の主な役割として問われた。それに対して、2000年初め頃から成果主義編重に対する反省から部下の主体性を重視する風潮が高まり、マネジメントの焦点が「行動」-「思考」に移行した。この代表的なアプローチが質問によって部下の思考を促進するコーチングや部下とのコミュニケーションを重視し部下の「思考」や「行動」に関与する支援型マネジメントなどである。つまり、部下の主体性を重視するプロセス志向のマネジメントが管理者に求められるようになったということだ。この背景には、組織が実行力を維持するためには、成果追求だけでなく組織構成員個々のモチベーションの維持・向上が重要であること、変化の激しい環境下で「考える人-実行する人」の組織体制では変化に対応しきれなくなり組織内に多くの「思考」を創りだす必要性が高まったことなどがある。

昨年のリーマンショック以降、市況が急速に悪化する中でこれまでの成功パターンが通用しなくなっている。そのような中で特に現場における「思考」の必要性はさらに強まっており、部下の「思考」マネジメントに悩みを持つ管理者が増えている。部下が指示されたことしかしない、成果が上がらないにも関わらず行動を変えようとしないといった問題が散見され、部下に考える力が無いなど「思考の限界」についての問題意識を強く持っているようだ。このような部下に対して多くの管理者は「なぜそのような行動を行ったのか?」という「なぜなぜ問答」を部下に繰り返し行ったり、コーチング的アプローチで部下の思考を促進しようとしているが、なかなか効果が見えてこないのが実態ではないだろうか。

 では、部下の思考を促すためにはどのようなアプローチがあるだろうか。

 まず1つは上記のように思考行為に直接アプローチする方法であり、もう1つは「思考の限界」の原因になっている「情報の限界」にアプローチする方法が考えられる。つまり部下が認識する情報の量と質を変えることによって部下の思考力を高めるアプローチである。過去、管理職クラスに実施したアセスメントの結果から考えると、多くのマネジメントの現場で、この管理者が部下に対して「情報の限界」マネジメントを行うという視点が意外なほど意識されていない。多くの管理者は必然的に部下よりも多くの情報量を有しているものだが、部下の情報レベル、つまり思考の前提となる情報を部下がどれだけ備えているかを鑑みないまま、部下の思考力を問題視しがちといえる。

管理者が行う「情報の限界」マネジメントは大きく3つに分けて捉えることができる。

1つ目は「セクション内情報流通機能」であり、2つ目は「セクション内外の情報流通機能」、そして最後は「社外情報流通機能」である。

1つ目の「セクション内情報流通機能」とは、部下が同じ業務を行っている場合に特に重要な機能となる。例えば、営業マネージャーは各営業マンが担当顧客先で得た顧客情報・業界情報や成功事例をセクション内で流通させ、部下の思考を広げることが必要となる。

2つ目の「セクション内外の情報流通機能」とは、通常の上位方針などの公式情報だけでなく、上位方針の背景情報から現在の全社業績の見通し、経営者の発言や問題意識、他部門の動き(他部門や他エリアでの成功事例等も含む)などの非公式情報を共有する機能である。特に非公式情報の重要性を理解している管理者は社内人脈が豊富であり、現状把握や近未来を予測するために必要な情報を押さえ、部下が具体的にイメージできるレベルで情報を提供することが可能となる。

3つ目の「社外情報流通機能」とは、上司自身が各情報ソース(社外人脈、書籍、顧客など)にアクセスし自ら収集した情報を部下の思考のインプット材料として提供するものである。管理者は通常自身のマネジメント業務を進めるためには、部下よりもよりマクロ的視点から情報ソースにアクセスすることが不可欠であり、部下と情報収集の視点は異なるものである。

 管理者の多くは、上記3つの機能において特に2つ目の「セクション内外の情報流通機能」における非公式情報と「社外情報流通機能」を軽視しがちであり、ほとんどもしくは全く役割が担われていない傾向が見受けられる。

 もしあなた自身のマネジメントを振り返り、上記のような「情報の限界」マネジメントにおいて改善の余地があるとすれば、部下の思考力を高めるために「思考の限界」マネジメントと同時に「情報の限界」マネジメントに取り組んでみてはいかがだろうか。

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